5.トレンド

5.トレンド

相場はいったん動意づくと、ランダムな足取りを見せながらも、ある程度の期間は一定の角度を保って一方向に進む習性がある。 この流れを捉え、それに乗るための試みを「トレンド分析」と言う。

トレンドは相場の基調、つまり大勢の思惑を映し出す。上昇トレンドは、買いが有利だと見て、その流れに乗ろうとする投資家が多いことの表れである。下降トレンドはその逆で、売り方優勢の状況を示すものである。トレンドを確かめるには、ローソク足のチャート上にトレンドライン(傾向線)を引いてみればよい。その引き方は、図5-1-Aのように上昇開始時(もしくは上昇開始直後)の安値と次の押し目を直線で結ぶ。これを上昇トレンドラインと言う。しだいに安値が切り上がっていくことが示されている。

下降トレンドラインは高値と高値を結ぶ線(図5-1-B)で、上値が徐々に切り下がってくることを示す。なお、上昇トレンドラインは支持線が右肩上がりの形に変形し、下降トレンドラインは抵抗線が右肩下がりの形に変形したものと捉えればよい。つまり、上げ相場における押し目のめどは上昇トレンドラインに日足が抵触する地点となる。また、下降局面における戻りの限界のめどとなるのは、下降トレンドラインに日足が抵触する地点である。

図5-2 NZドル/円月足

実際のチャート(図5-2)を見てみよう。AとBを結んだ上昇トレンドラインのC点に注目していただきたい。

Bから再び上昇を開始した後、一時的に下げているが、トレンドラインに抵触したC点では買い物が集まって、一段の高値を取りにいっている。多数の人が上昇トレンドに注目していることが明らかで、押し目買いが集まり、相場を支えた形になっている。

ただし、X点では買い方の勢いが削がれた格好で、トレンドラインを下回っている。こうなると、買い方の多くに動揺が生じ、売り方優勢に転じたと見るべきである。すなわち、支持線割れと同じ意味を持つわけで、安値で買っていた人はひとまず利食う局面、高値で買いついた人もすぐに撤退すべきである。

なお、こうした転換サインは、それまでに上昇トレンドや下降トレンドが有効に機能していた期間が長ければ長いほど重要度を増す。

図5-3 ユーロ/ドル月足

<図5-3>はユーロドル相場の月足チャートである。2008年からは下降トレンドを形成してきたが、2017年1月に1.03ドル台前半で底入れし、2020年12月には下降トレンドラインを突破した。今後は上昇トレンドを維持している間、ゆるやかだが強気を継続すると思われる。

曲線トレンド

トレンドは直線になるとは限らない。値上がりにつれて押しがしだいに浅くなってくると図5-4のような曲線のトレンドを描くこともある。ただし、曲線トレンドは図からも分かるように、大相場の中盤から終盤にかけてその形が明らかになるので、序盤からこのトレンドに乗っていた人はともかく、この形を確認した後で便乗しようとするのは考えもの。相応の急反落を覚悟しておく必要がある。

図5-4 ユーロ/ドル日足

では、下降曲線トレンドラインが現れると底入れが近いかと言うと、一概にそうとは言い切れないのが相場の不思議なところ。下げ過ぎの反動から、ある程度の自律反発につながることは多いが、一気に高値を奪回するということは滅多に見られない。古くから天井3日、底100日と言われている。底入れ完了となるには、期間を要するのが一般的である。

扇形トレンド

相場が急反落して短期の上昇トレンドをいったん下に突き抜けた後、再び上値追いへと動き出し、新たなトレンドを描くことがある。その過程を図5-5で見ていただきたい。

図5-5 豪ドル/円週足

  • (1)下げ相場にピリオドを打ち、押し目をつけながら上がり始めた。ここで、上昇トレンドラインAを引いてみる。
  • (2)相場が急反落し、トレンドラインAを下回ってしまった。ズルズルと下げるのかと思われたが、まもなく下げ止まり反騰を始めたので、改めてトレンドラインBを引く。
  • (3)再び下げ始め、トレンドラインBを下回った。しかし、今回も下げ止まって反発したので3本めのトレンドラインCを引いてみる。

トレンドラインBとCの角度は、前回よりも緩やかなものとなる。だが、これが結果的には中・長期トレンドとなり、「息の長い相場」になることもあるので軽視してはいけない。

さて、3本めのトレンドラインCを引いてみたときの形だが、Xを基点とした扇のような形になるので、これを扇形トレンドラインと呼ぶ。ここで注意しなければならないのは、3本めのトレンドラインを下抜いた場合。もはや上げ相場は終了し、下げの基調に入ったと見なすべきである。

一方の下げ相場においては、3本めの下降トレンドラインを上放れたときを大勢上昇相場への基調転換とみなす。

ページトップへ