1.ローソク足

1.ローソク足

相場分析と言えば、投資家のだれもがまず思い浮かべるのが「ローソク足」のチャートである。その名は値段の動きがローソクにそっくりの形で表されるところからきている。近年では海外の投資家の間にも広く普及し、数あるテクニカル分析のソフトウェアの中でも定位置を占めるようになってきた。

テクニカル分析にはさまざまな手法があるが、何に注目するかによって大まかに分類することができる(表1-1)。この中で、ローソク足のチャートは、過去の足取りと比較して現在の値位置が高いのか、安いのかを明瞭に示してくれるものと言える。

ローソク足をグラフ化する際には、縦軸を値段、横軸を時間の経過とするので時系列チャートとして分類される。これに類するものとしては欧米式のバーチャートがある。一方で、非時系列チャートと呼ばれるものには、新値足や練行足などがある。ローソク足のうち、日々の値動きを対象とするものは日足(ひあし)と呼ぶ。週単位なら週足(しゅうあし)、月単位なら月足(つきあし)と呼ぶが、ここでは日足を中心に説明する(図1-1)。

日足を書くのに必要なデータは、始値(寄り付き値)、高値、安値、終値(引け値)の4つ(4本値)である。記入要領は図1-1の通りで、始値と終値でローソクの芯の形(実体部分)を描く。さらに1日のうちに始値や終値より高い値段、安い値段があった場合には、その座標まで実体部分から線を伸ばす。上に伸びた線は上影線、もしくは上ひげと呼び、下に伸びた線は下影線、あるいは下ひげと呼ぶ。

なお、終値が始値より高い場合は陽線と呼び、これを示すために実体部分を赤い色、もしくは白抜きで表現する。終値が始値より安いものは陰線と呼び、青や黒で表す。このほか、始値と終値が全く同じ値段になることがある。これは寄引同事線と呼ばれる。

ローソク足はその実体の大小やひげの長さなどにより、それぞれの持つ意味が異なってくる(図1-2-A、B、C)。

極線(コマ)と寄引同事線

ローソク足で相場が天井や底を打つときに現れることが多い形を挙げてみよう。その形は商いが活発なときに現れる場合と、閑散なときに現れる場合とでは意味が異なってくる。重要なのは前者の方。基調転換の分岐点になることもあれば、一段高や一段安の前兆ともなりうるからである。

図1-3 英ポンド/円週足

その端的な例が<図1-3>に示したポンド円相場の週足。2011年9月に116円台後半に底入れし、その後は上昇傾向が続き、2015年半ばには195円台を回復した。しかし、200円台回復を試せず、ほぼ寄引同事と言える極線が出て、天井を打った。その後、下値を探る展開となり、2016年10月には一時124円台前半まで下落した。

これは大相場に発展した例だが、極線や寄引同事線がこうした展開を暗示することは少なくない。なぜかと言えば、極線や寄引同事線は1日の売買の攻防を通じて「売り方」と「買い方」の勢力が詰抗したことを示すからである。そして翌日の寄り付きで、上放れたとすれば、結局は買い方に軍配が上がったことになる。反対に、下放れると売り方の勝ちとなり、買い方は動揺をきたす。後に述べる宵の明星明けの明星の解釈にも通じるので、併せて参考にしていただきたい。

上影線と下影線

上昇相場で警戒を要するのが長い上ひげを持つ上影線。特に、高値で寄り付いてもう一段の高値を目指しながら引けにかけては急速に押し戻された場合、そのまま天井打ちとなることが非常に多い。翌日に下落するようなら、その公算はより大となる。

また、連日にわたって上影線が出て、上に伸び悩む相場つきとなると、やはり目先の天井となるケースが多い。

一方の下影線に関しては、中長期的にかなり下げた後に長い下ひげを持つたぐり線が出ると大底の前兆となりうる。ただし、実際には1日様子を見て、翌日に上放れた場合に限って買いを入れるといった方法が無難である。

この下影線は、出現する値位置に注意する必要がある。上昇を続けた後の高い水準で現れた場合は、強そうに見えて実は上値の限界を示すことがあり、首つり線と呼ばれる。この形にだまされて買いに出るのは自殺行為に等しいという意味である。高値圏での下ひげの長い線は、先に述べた極線と同様の感覚で、特に警戒すべきである。

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