【業界図鑑】不動産業界 ~ ビル賃貸事業が好調

2020年02月19日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー

【業界図鑑】不動産業界 ~ ビル賃貸事業が好調

2月17日、不動産経済研究所が発表した1月の一戸当たり首都圏マンション価格は、8,360万円(前年同月比+47.9%)と高騰し、過去最高だった1990年11月を上回った。高額大型物件の発売が平均価格を押し上げた。新規発売戸数は1,245戸(同-34.5%)であり、5か月連続の減少となった。

1. 新築マンション価格は高止まり

今回の価格高騰は一時的要因と見られるが、高止まりの傾向が続いている。年間で見れば、2019年は5,980万円(同+1.9%)で2年ぶりの上昇だった。平方メートル当たりの単価は87.9万円と、7年連続上昇している。70%以上が好調とされる初月契約率は62.6%で、4年連続60%台と低迷している。

この背景には、ディベロッパーが価格を下げず、買い手が追い付かなくなっている状況がある。マンション販売価格は、土地の仕入れ値に工事費用、販売費用、利益を上乗せして算出される。価格を下げる必要性が出てくれば、部屋を狭くして数を増やすか、設備のグレードを落とすしかない。

2. オフィス市況も好調

オフィス市況はどうなっているのだろうか?東京ビジネス地区(都心5区)の動向をみると、2020年1月のビル空室率(新築・既存)は1.53%(平均賃料22,448円/坪)であり、2012年6月の9.43%(同16,763円/坪)から継続的に改善していることが分かる。内訳を見ると、新築ビルの空室率は3.37%、既存ビルは1.48%だった。2017年までは低供給・低需要型の市況回復であったが、2018年からは新築ビルの供給量も増加傾向にある。現在は本格的に好調であると言えるだろう。

<東京ビジネス地区のオフィスマーケットデータ>

平均空室率

(単位:%)
出所:三鬼商事WEBサイトより

平均賃料

(単位:円/坪)
出所:三鬼商事WEBサイトより

3. 東京一極集中が進む

ディベロッパーは今後の供給地域が限られていると見ているためか、値引きをしない姿勢が鮮明になっている。三井住友不動産、三菱地所、住友不動産の大手3社においては、地域別比率が都心5区7~8割、首都圏全体で9割以上となっている。今後さらに高需要地区の比率を高め、アセットクオリティを重視していくことが予想される。

今後の事業リスクとしては、中古物件市場の活性化や修繕積立金問題による外国人オーナーの退出などがきっかけとなり、市況が悪化することが挙げられる。しかし、低金利という好事業環境は当面続くだろう。

4. 不動産関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(2/19)
注文画面
3231 野村不動産ホールディングス 「プラウド」、「オハナ」などブランドマンションの開発・分譲が主力。総合スポーツクラブ「メガロス」を展開。 2,747
3289 東急不動産ホールディングス 東急系の総合不動産大手。ビル賃貸が柱。リゾート開発、東急ハンズなどの小売業を展開。 787
8801 三井不動産 不動産ディベロッパー最大手。賃貸、商業施設、分譲事業の全てが好調。海外でも「ららぽーと」プロジェクトを進める。 2,920
8802 三菱地所 不動産ディベロッパー第2位。丸の内、大手町、有楽町で再開発を展開。アセットクオリティが高い。ビル事業好調。 2,096.5
8830 住友不動産 不動産ディベロッパー第3位。ビル賃貸が柱。分譲マンション販売戸数で首位。住宅リフォームにも強い。 4,087

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

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