2019年05月15日
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【業界図鑑】化学業界 ~ 日本の命運を握るリチウムイオン電池材料メーカー
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液晶パネル、DRAM、DVDプレーヤー、携帯電話などは、かつて日本が世界をリードしていた。しかし、円高、技術流出、人材流出、外国の官民一体の大規模投資により、中国、韓国、台湾メーカーが台頭。日本はシェアを大きく落としている。リチウムイオン電池も例外ではないが、2割のシェアは維持していると見られる。今後数年に亘り、EV向け大型電池の需要があるため市場は拡大する見込みだ。日本メーカーが覇権争いで生き残ることが期待されている。
1. リチウムイオン二次電池の誕生
電池には大きく分けて、太陽電池などの物理電池と化学電池がある。さらに化学電池は、充電できない一次電池と充電できる二次電池に分類される。二次電池は1859年にフランスのプランテによって発明され、「プランテ電池」という鉛蓄電池の原型が生まれた。その後、1990年に「ニッケル水素蓄電池」が日本で商品化されたが、高エネルギー密度化及び小型軽量化へのニーズを満たせなかった。吉野彰氏らに発明された「リチウムイオン二次電池」は、1991年に旭化成とソニーで商品化され、ノートパソコンや携帯電話に次々と搭載されていった。
2. 中国、韓国メーカーの台頭
ソニーに続き、当時の松下電池工業、三洋電機 (現パナソニック子会社)、日本電池 (現ジーエス・ユアサ コーポレーション)、日立マクセルが二次電池市場に参入 (ソニーの電池事業は2017年に村田製作所が買収)。2000年の日本の世界シェアは97%だったが、2008年には50%に低下した。現在世界首位である韓国のLG化学は、デトロイトに巨大工場を建設し、米国自動車メーカーに供給している。2017年に生産量で世界首位となった中国のCATLは、欧州の自動車メーカーだけでなく、ホンダや日産にも供給している。トヨタや米国のテスラを主な顧客とするパナソニックは世界第2位。現在、産官学が一体となってEV用途での実用化を目指し、全固体リチウムイオン電池の研究開発に取り組んでいる。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が、2018~2022年度のプロジェクトとして総額100億円を見込んでいる。
3. 低コスト材料がカギ
リチウムイオン電池は、スパイラル構造となっている。シート状の正極材と負極材をセパレーターで分けて渦巻き状にしたものであり、リチウムイオンが正極と負極を移動することで充電と放電を行う。製造コストのうち7割を材料が占めている。負極材にはカーボン系、合金系、電解液には有機溶媒、セパレーターには合成品などが使用されている。中でも正極材のコストが高く、日本で主に使われるのは、エネルギー密度が高いニッケル、コバルト、マンガンからなる酸化物。一方中国で使われるのは、コストが安く安全性が高いリン酸鉄リチウムである。リン酸系は、課題である電気伝導性も改善されつつあり、採用が増えている。住友大阪セメントは、リン酸マンガンリチウムという新材料の開発に成功した。今後も材料メーカーが、低コストで安全性や耐久性が高い新材料を開発することが、日本が再び世界の電池市場をリードするためには欠かせない。
<リチウムイオン電池材料関連3社の業績推移>
注:20/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン-企業分析ナビ
4. リチウムイオン電池材料関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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