2020年03月18日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー社
【業界図鑑】食料品業界 ~ コーヒー国際価格が再び下落、長期的には上昇懸念も
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コーヒー国際価格が安値で推移している。2019年11月に、最大生産国のブラジルの生産予想が引き下げられたことに市場が反応し、アラビカ種のニューヨーク先物が1ポンド114セント前後と約1年ぶりの高値水準をつけたが、2月には106セントまで下がっている。コーヒー業界にとっては、当面好適な事業環境が続くと見られる。
1. コーヒー好きな日本人
日本はコーヒー消費大国である。2019年のコーヒー消費量 (速報値) は452,903トンで、1人1 週間当たり10.62杯飲んでいる (2018年)。日本のコーヒー輸入量は、米国、ドイツ、フランス、イタリアに次いで5番目に多く、世界全体の約4%を占めている。
コーヒーの主な商業用原種は、アラビカ種とロブスタ種 (カネフォラ種の一種) であり、日本では上質な香りで酸味と甘みのある前者が好まれている。後者は麦のような香りで苦みと渋みがあり、標高が低い所でも栽培できるのが特徴である。
2. 投機筋の思惑で動く市況
価格は先物取引所で決まるため、投機的な動きをする。アラビカ種はニューヨーク市場、ロブスタ種はロンドン市場で取引されている。コーヒーの木は多年性のアカネ科で、苗を植えてから3年目に最初の収穫が始まる。例えば2014年にはブラジルが干ばつに見舞われたため価格が高騰。その時植え付けが急増することになる。そして約3年後、市場が供給過剰を警戒し価格が暴落、というパターンになる。
ブラジルでは2018年から豊作が続き、政局混迷や輸出による経済立て直しのためにレアル安を維持していたことから、ここ2年は価格が低位で推移している。
<国際コーヒー機関の日次複合指標価格の推移>

出所:全日本コーヒー協会「全協海外情報476号(ICO複合指標価格)」
© International Coffee Organization (www.ico.org)
3. 将来的には生産を消費が上回る
世界のコーヒー生産量は、2000年代半ば以降増加し続けている。国際コーヒー機関 (ICO;International Coffee Organization) によれば、2017/18年度 (2017/10~2018/9) の生産量は、前年度比+5.7%で1億6,481万袋 (1袋60Kg) 。うち6割を占めるアラビカ種が同+2.2%で1億182万袋、ロブスタ種が+11.7%で6,299万袋だった。
2019/20年度の世界生産量は1億6,871万袋 (-0.9%) と予想されているが、消費量見込みは1億6,943万袋である。2019/20年度は63万袋の供給不足ということになる。国際的な研究機関によれば、「アラビカ種」の栽培に適した土地が、2050年には温暖化によって半減するとの調査結果もある。その一方で、中国などではコーヒーショップが乱立し、消費量が急激に増えている。
今のところ、コーヒー業者やコーヒーショップにおいて、仕入れ価格と販売価格にはバッファーがあると見られる。しかし、長期的にはコーヒー市場で需要と供給のバランスが変化し、価格が上昇することが予想される。そうなれば価格競争の中であっても、値上げを検討せざるを得なくなるだろう。
4. コーヒー関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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