【業界図鑑】化学業界 ~ スキンケアで顧客争奪戦を繰り広げる化粧品メーカー

2020年02月05日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー

【業界図鑑】化学業界 ~ スキンケアで顧客争奪戦を繰り広げる化粧品メーカー

2月に入り、百貨店では「春のメイクアップフェア」が始まった。化粧品売り場には、新作のメイクアップ商品 (仕上用化粧品) やリニューアルしたスキンケア商品 (皮膚用化粧品) が並ぶ。各メーカーとも、メイクアップアーティストを使った「体験フェア」に力を入れている。その背景には何があるのだろうか?

1. 懸念された2019年の化粧品市場

2019年1月、中国で「EC法」が施行された。それまで、日本で大量購入した商品をスーツケースいっぱいに詰め込み、中国のネットショップやSNS上で高く売って利益を得ることや、安く売ってシェアを取ることが横行していた。この法律により、EC上で個人も企業と同様の納税が義務付けられ、違反者には罰金が科せられるようになった。また、EMS (国際スピード郵便) により発送された化粧品、医薬品、医療機器、保健食品も、中国当局の認可を得なければ通関できなくなった。

さらに10月の消費増税や天候不順、韓国・香港での売上減少といったネガティブ要因が重なり、2019年は化粧品市場の動向が懸念された年だった。

2. 底堅い化粧品市場

経済産業省生産動態統計によれば、2018年の化粧品の国内工場出荷金額は、1兆6,942億円 (前年比+5.2%) だった。2019年は10月以降がやや低調となっている。生産量の12月速報値は、「洗顔クリーム類」が前年同月比+3.8%と好調だったものの、「乳液・化粧水類」が-13.9%、「仕上用化粧品」が-4.5%と落ち込んだ。しかし、2019年の販売金額の推移を見ると、1月のEC法の影響は一時的なものだったようだ。また、化粧品は値引きがあまりなく日持ちがするため、増税前の駆け込み需要が大きかった。したがって、2019年全体の市場はそれほど崩れなかった。

<主な皮膚用化粧品の販売金額の推移 (2014/11~2019/11)>

出所:経済産業省生産動態統計より作成

3. 大手化粧品メーカーの戦略

化粧品は、地域によって売れ筋が異なる。アジアではスキンケア商品、欧米ではフレグランスやメイクアップ商品が中心だ。日本では個人の節約志向が高まっており、いわゆるプチプラコスメが台頭している。しかし、それはメイクアップ商品の分野が中心だ。スキンケア商品の分野では、マツモトキヨシなどのドラッグストアがPB商品を高付加価値化しているだけなく、食品や医薬品メーカーが次々と参入しており、以前よりも競争が激しくなっている。

したがって、大手化粧品メーカーは、高価格帯のスキンケア商品に注力せざるを得ない。顧客をいかにしてブランドスイッチさせ、リピートさせるかがカギとなる。しかし、国内での新規開拓には限界がある。メンズ化粧品はかつて言われていたほど伸びていない。まだ時代が早すぎるのかもしれない。各社ともアジア市場でEコマースや免税店を強化するなど、次々と拡大戦略を打っていかなければならないだろう。

4. 化粧品関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(2/5)
注文画面
4911資生堂国内化粧品市場首位。高価格帯商品が好調。海外売上比率55%。ブランドはクレ・ド・ポー ボーテ、インテグレート、マキアージュなど。7,035
4919ミルボン国内美容院向けヘア化粧品で首位。ヘアケアだけでなく染毛剤やパーマ剤も扱う。コーセーと化粧品を共同開発。海外売上比率15%。無借金経営。5,640
4922コーセー国内化粧品市場第3位。高価格帯商品が好調。海外売上比率28%。ブランドはコスメデコルテ、雪肌精、ジルスチュアートなど。14,550
4927ポーラ・オルビスホールディングス国内化粧品市場第4位。百貨店、訪問販売、通販で展開。海外売上比率9%。ブランドはポーラ、オルビス、THREE、Juliqueなど。2,394
4452花王国内化粧品市場第2位。2006年にカネボウを買収。海外売上比率38%。ブランドはソフィーナ、エスト、キュレル、ルナソル、ケイトなど。8,581

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

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