2020年01月15日
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【業界図鑑】医薬品業界 ~ バイオ医薬品市場の潜在力
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2019年は、医薬品業界の大型買収が話題となった年であった。1月早々に、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブが米セルジーンを740億ドルで、米イーライリリーが米ロキソ・オンコロジーを約80億ドルで買収すると発表。さらに、武田薬品工業がアイルランドのシャイアーを620億ドルで買収を完了。買収された会社は、いずれもバイオ医薬品メーカーである。
6月には、米ファイザーが米アレイバイオファーマを114億ドルで、米アッヴィがアイルランドのアラガンを630億ドルで買収すると発表。米アッヴィはバイオ医薬品メーカーであり、バイオ医薬品メーカー自体が巨大化する時代となった。
1. バイオ医薬品とは
2018年に世界で最も売れた医薬品は、主に関節リウマチの症状軽減や予防に使われる「ヒュミラ」(254億ドル)だった。米アッヴィの製品であり、同社は多額の資金を研究開発や買収に充てることができるのである。
そもそも「バイオ医薬品」とは、生物の力を利用して作る医薬品のことである。具体的には細胞や微生物がタンパク質(ホルモン、酵素、抗体等)を作る力を利用して製造される医薬品である。それ以外の「化学合成医薬品」は、薬品を化学反応させて作る低分子化合物で、120年前のアスピリン誕生により普及した。それ以前は、薬といえば薬草やそれを煎じたものだったことから、現代は化合物の時代を経てまた自然に回帰しているとも言える。人間のタンパク質の構造は複雑であり、低分子化合物では対応できないため、分子量が大きく複雑な構造を持つバイオ医薬品が期待されているのである。
2. バイオ医薬品比率が上昇
バイオ医薬品の開発・製造、品質管理には、高度な技術や大規模な設備が必要であり、高額になりがちだ。したがって、ジェネリック医薬品(後発医薬品)のような位置づけである「バイオシミラー(バイオ後続品)」の普及も期待されている。ただし、ブランド医薬品とジェネリック医薬品の関係とは異なり、生物に依存する製造工程で作られることから様々な因子の影響を受けるため、同じものは作れない。先行品と同等・同質の有効性、安全性を有することが治験により確認されているものと定義される。したがって、値段も先行品の約7割程度までしか下がらない。
Evaluate Pharmaは、2010年から2018年までの世界の医薬品売上が年平均2.3%成長となったのに対し、2019年から2024年までの年平均成長率は6.9%になると予想している。2024年の売上は、1兆1,800億ドルに達すると見込む。2024年の全医薬品市場に占めるバイオ医薬品のシェアは、31%まで上昇すると予測している。
3. バイオ医薬品メーカーの特徴
バイオ医薬品は、ホルモン類,サイトカイン類,酵素,抗体等に分類することができる。世界で初めて開発されたのは、ホルモン類の遺伝子組換え「ヒト・インシュリン」である。1982年に米国、1985年に日本で承認された。開発したのはジェネンテック(後にロッシュが買収)で、生産はイーライ・リリーだった。2000年代に入るとジェネンテック、アムジェン、ギリアドといったバイオベンチャーが、時価総額で日本の大手医薬品メーカーを凌駕するようになった。
日本のバイオベンチャーには「大学・アカデミア」タイプが多い。例えば東京大学発のオンコセラピー・サイエンス、大阪大学発のアンジェス、名古屋大学発のエムズサイエンスがある。また、製薬会社で塩漬けとなっているパイプラインを再開発するそーせい、メディシノバといった「リ・プロファイリング」型の企業もある。さらに、海外で開発された製品を日本に導入して独占的に開発・販売するシンバイオ製薬のような「導入型」タイプが存在する。今後もバイオ医薬品市場では再編が続くと見られるが、買収金額は高額になっていくだろう。買収側としては、「目利き」が益々重要になってくる。
4. バイオ医薬品関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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