2020年01月08日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー
【業界図鑑】小売業界 ~ ショッピングモールが生き残る道
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世界の投資家は米国の個人消費動向に注目しているが、実店舗よりオンライン経由の購入を重視し始めている。2019年の年末には、アマゾン・ドット・コムがホリデーシーズンの受注が記録的な水準になったと発表。マスターカード・スペンディング・パルスによれば、米国ホリデーシーズンの全体の売り上げが前年比+3.4%であったのに対し、オンライン販売は+19%。シェアは15%近くを占めるようになっているとのことである。
1. 米国ではショッピングモールも閉鎖へ
コアサイト・リサーチによれば、2019年に閉鎖された米国の小売店は9,300店と、2018年の5,700店から大幅に増加した。2019年は日本でも伊勢丹相模原店及び府中店、新潟三越などの大型百貨店の閉鎖が話題になった。オンラインだけでなく、大型ショッピングモールにも顧客を取られたことが原因のようだ。しかし、米国ではショッピングモールさえ閉鎖する時代に突入している。日本のショッピングモールは生き残れるだろうか?
2. 日本でもショッピングモールのオープン数が鈍化
日本で最初の「郊外型」ショッピングモールは、1968年のダイエーによる香里ショッパーズプラザで、「駅前型」ショッピングモールは1969年の玉川タカシマヤである。米国では1950年代から住宅の郊外化が始まり、それに伴って商業施設も整っていったため、モール開発も早かった。
日本ショッピングセンター協会によれば、2018年末時点の総ショッピングセンター数は3,220、総テナント数は161,960店、1ショッピングセンター当たりの平均テナント数は50店だった。前年からほぼ横ばいで、急速に閉鎖しているということはなさそうだ。しかし、新規オープン動向に注目すると、2018年は37で、リーマンショック前の水準である97からはかけ離れている。特にここ3年は減少傾向にある。
<立地別ショッピングセンターオープンの推移>

注:中心地域は人口15万人以上の都市で、商業機能が集積した中心市街地。周辺地域は中心地域以外の全ての地域。
<新規オープン1ショッピングセンター当たりの平均店舗面積とテナント数の推移>

出所:日本ショッピングセンター協会
3. これからのショッピングモール
日本のショッピングモールは、スマートフォンの普及により顧客を奪われている面もあるだろう。しかし、米国のような急速な閉鎖は起こらないのではないだろうか?それにはスマートフォンでは実現しない、コト消費の割合を増やすことが欠かせない。既に、朝から晩まで家族でも過ごせるように映画館、遊具、動物などを入れる工夫はされているが、今後はより一層、リラクゼーション、ジム、スパ、イベント開催などの導入に注力すると見られる。専門店単独では経営が難しくなっているため、教育や医療分野の方からも参入してくるのではないだろうか?
オンラインとの棲み分けにおいて、リアルではホテリング・モデルがますます使われると見られる。つまり、尖ったものではなく、多くの支持を得ようとした中央寄りの物が扱われやすくなる。しかし、あまりやりすぎると顧客に見放されるため、さじ加減が重要だ。ショッピングモールはテナントを入れ替えることによってさじ加減がしやすいため、しっかりマネージしていけば生き残れるのではないだろうか?吹き抜けの開放感と、お洒落でスタイリッシュな世界観を維持することにより、多様な顧客層を調和させることができるからである。
4. ショッピングモール関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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