2019年12月11日
岡三オンライン証券株式会社
【業界図鑑】情報・通信業界 ~ 5Gの円滑な普及を目指す日本
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米中貿易協議に関して様々な報道が交錯している。株式市場の方向感が乏しくなるため、そのような時にはいわゆるテーマ株が物色される。最近の注目テーマは「5G(第5世代移動通信システム)」だ。日本は5G元年である2019年に、乗り遅れたのだろうか?
1. 中国での5G対応機種の普及がスマホ出荷台数を牽引
アメリカの調査会社IDCによれば、2020年の世界のスマートフォンの出荷台数は、前年比+1.5%の14億台になる見通し。実現すれば、前年を上回るのは4年ぶりとなる。そのうち5G対応機種の出荷台数は、全体の14%にあたる1億9,000万台に上ると予想。牽引するのは中国であり、日本やオーストラリアなどアジア太平洋地域やヨーロッパの国々では、5Gへの対応が予想したほど進んでいないとの見解を示した。
2. 5Gは商用化から普及に時間がかかる
日本での5G商用化は2020年春の予定だ。1年早く始まった韓国では、年末には人口の10%が利用すると予測されている。しかし、当初は通信の不安定さや利用可能エリアの狭さが問題となり、快適には使えていなかったようだ。3G商用化は、NTTドコモが世界に先駆けて実現した。しかし、ネットワークだけでなくデバイスやコンテンツなどのサービスが伴わず、すぐには普及しなかった。グローバル携帯電話事業者の業界団体GSMAも、5G回線の世界人口カバー率は、2022年になってから2割を超えると予測している。
<5G回線数の予測>

出所:総務省「平成30年版情報通信白書」
3. 5G電波の割り当て条件
第4世代の100倍超の高速通信を可能とする5Gは、通信の遅れが少なく、1キロ平方メートル当たり100万台の機器を同時接続することが可能だ。医療現場で疾病リスクを見える化し予防することや、警備において高精細画像システムで人物の行動を分析し、不審行動を発見して未然に犯罪を防ぐことなど、産業分野への活用が期待されている。
2019年4月、総務省は、携帯4社に5G電波を割り当てた。携帯4社は、2023年度末までに全国に7万局の基地局を設置するとしている。電波の割り当ての条件として、「5Gの特性を生かした多様なサービスの広範かつ着実な普及」を提示している。政府は、スピードよりもトラブルの少ない円滑な5Gサービスの開始を重視し、個人よりも産業分野での活用を期待しているようだ。
<大手キャリア3社の業績推移>
注:20/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ
4. 携帯電話関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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