【業界図鑑】小売業界 ~ 淘汰の時代を経てコンセプトが多様化する居酒屋

2019年11月27日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】小売業界 ~ 淘汰の時代を経てコンセプトが多様化する居酒屋

そろそろ忘年会の予定が決まり始める頃だ。外食業界の業態に注目すると、ここ10年は居酒屋の店舗が減り続けている。価格競争についていけない店が続出したからだ。しかし、節約志向の高まりによって、居酒屋人気が復活するかもしれない。

1. 成長しつづける外食市場

日本フードサービス協会の調査によれば、2018年の外食市場規模は、25兆7,692億円で前年比+0.3%。訪日外国人や法人交際費が増加し、一人当たりの外食支出額減少のマイナスをカバーした。業態別では、「ファーストフード」の洋風、「ファミリーレストラン」の焼き肉が特に好調だった。「パブレストラン/居酒屋」は、10年連続で前年を下回ったが、前年比-1.5%と下げ止まりつつある。

2. 10月の売上は不振

2019年10月は、大型台風や消費増税により、全体の売上が前年同月比-2.4%と落ち込んだ。「ファーストフード」の洋風における客単価上昇は依然として続いており、客数減少のマイナスをカバーできた。一方、「ファミリーレストラン」の洋風は、客単価は上昇したものの、客数は減少した。「パブレストラン/居酒屋」のうちパブ、ビアホールは、ラグビー・ワールドカップ効果により同+2.7%と好調だったが、居酒屋は同-8.4%と厳しい状況だ。

<外食市場の売上高と店舗数の伸び率推移>

出所:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」

3. 忘年会シーズンの予測

昨年12月の「パブレストラン/居酒屋」の売上は、忘年会需要が振るわず前年をわずかに下回った。業界全体の傾向でもあるが、店舗数が減少しているため、売上を伸ばすには客単価の上昇がカギとなる。今年も単価はあまり上げられないと見られるが、維持しなければ人件費の上昇もあり採算が取れない。小規模、個人経営の居酒屋で、生き残っている店は、マスターの個性、ブランド素材、料理の腕で特徴を出している。

しかし、大手チェーンも、個性のない居酒屋ではインパクトに欠けるため、工夫し始めた。例えばワタミの「ミライザカ」は、人気のハイボールに合う唐揚げを出し、国産有機野菜を使うなど、時代に合わせたコンセプトになっている。比較的落ち着いた空間であれば、若者向けであっても年配者が集まってくる。いわゆる昔の渋いイメージの居酒屋では集客がおぼつかない。節約志向が高まっているとはいえ、お客様は気分転換がしたいのだ。新鮮なイメージを打ち出したチェーンがリードすることによって、再び居酒屋人気が復活するのではないだろうか?

<外食企業マッピング>

出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ

4. 外食関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(11/27)
注文画面
2702 日本マクドナルド
ホールディングス
外食産業で国内上位。フランチャイズが7割。既存店も好調。退店や店舗改装に加え、コーヒーを刷新するなどの経営努力により業績回復。研修にiPadを活用し時間短縮。 5,480
3397 トリドール
ホールディングス
焼き鳥が発祥だが、低価格うどんの「丸亀製麺」が主要ブランド。海外売上高比率は21%。 3,020
7522 ワタミ 居酒屋を国内外で運営。既存店堅調。高齢者向け宅食サービスも展開。ブランドは「鳥メロ」、「和民」、「フライデーズ」「GOHAN」。 1,322
7550 ゼンショー
ホールディングス
外食産業で国内首位。牛丼でも首位。ブランドは「すき家」「なか卯」、「はま寿司」、「ココス」、「ジョリーパスタ」。 2,534
9861 吉野家
ホールディングス
牛丼で国内2位。「吉野家」が売上の半分を占める。アジアを中心に海外進出。うどん値上げで採算改善。ブランドは他に「フォルクス」、「はなまる」、「京樽」。 2,850

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

注意事項

  • 本投資情報は、情報の提供のみを目的としており、取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 本投資情報の公開および各コンテンツの更新については、都合により予告なく休止、変更、削除する場合があります。
  • 本投資情報の掲載情報の正確性・妥当性等について、岡三オンラインおよびその情報の提供者が一切保証するものではありません。ご投資の最終決定は、お客さまご自身の知識、経験、投資目的、資産状況等に適う範囲で、ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本投資情報によって生じたいかなる損害についても、岡三オンラインは一切責任を負いかねます。
  • 本投資情報は、いかなる目的であれ岡三オンラインの許可なく転用・販売することを禁じます。
ページトップへ