【業界図鑑】サービス業界 ~ スマート農業に貢献するIT企業

2019年11月13日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】サービス業界 ~ スマート農業に貢献するIT企業

2000年に日本で企業の農業参入が認められてから、もうすぐ20年になる。当初、農業関係者以外の一般企業は、農業生産法人に対して10%までしか出資が認められていなかったが、2015年には50%未満まで可能となった。2016年11月には「農業競争力強化プログラム」が決定され、農業者の所得向上を図るための改革が始まった。

1. 農業総産出額は増加基調

2017年の農業総産出額は、9兆2,742億円(前年比+0.8%)と2000年以降で最も高い水準となった。2014年まで減少傾向だったが、2015年以降は増加に転じている。
内訳をみると、まず野菜が伸びている。2017年に全ての加工食品に原産地表示が義務付けられ、加工・業務用野菜での国産志向が高まったことが大きい (生鮮食品の原産地表示義務付けは2000年)。食の外部化は今後も進展が期待されるため、国内野菜にとってはポジティブな規制と言える。
また、畜産も増加傾向にある。中でも鶏卵は中食向けのニーズがあり、価格も安定している。ブロイラー (肉用鶏) においては、生産から販売までを一貫して行うインテグレーション化の進展により生産性が高まっている。健康志向や時短へのニーズから、サラダチキンなどのヒット商品も生まれている。

<農業総産出額及び生産農業所得の推移 (1990年~2017年)>

出所:農林水産省「生産農業所得統計」

2. 生産農業所得が向上

生産農業所得も、2015年から向上し続けている。2017年は3兆7,616億円(同+0.2%)だった。原油価格上昇はマイナス要因だったが、農業総産出額の増加及び肥料・飼料の価格下落がプラス要因となった。
農業就業人口は、2019年の概数値が168.1万人であり、3年前の192.2万人からも減り続けている。2010年は260.6万人だった。全体の所得が増加しているのは、法人化した経営体数が増えていることが関係していると見られる。

3. 垂直統合とICT活用がカギ

前述のとおり、中食・業務用への販売や、一般消費者向けの商品開発により、農業生産額が増える傾向にある。つまり、農業の6次産業化がカギとなっている。1次産業としての農林漁業、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業の一体化で、「1×2×3=6」次産業という考え方である。こうした垂直統合は、農山漁村の所得の向上や雇用の確保には欠かせないだろう。
また、ICTの活用により、農作業の属人化を脱却し、標準化、定型化することも必要だ。本当に良いものというのは誰もが作れないものであり、大量生産は無理なのかもしれない。しかし、業界全体としては、高齢化が問題となっており、見える化により誰もができる仕事にしていかなければならないだろう。
今回はICTの技術によって、農業を支援している企業をピックアップしておきたい。スマート農業といっても様々な要素を含むが、例えば以下のようなものが挙げられる。大規模生産を可能にする農機の自動走行、クラウドデーターベース活用による作業状況・工程の管理、天候データ分析等による収穫予測や見回り作業削減、ロボットによる清掃や自動収穫。農業は実は先進国でこそ発展する産業なのである。

4. スマート農業関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(11/13)
注文画面
2493イーサポートリンク生鮮成果物業界むけのシステムを開発。生鮮MDシステムなどイオングループ向けを一手に受託。970
3694オプティム端末をクラウドで管理するサービスを提供。兵庫県と病害虫検知や農薬散布で共同事業を開始。2,700
6199セラクIoTで畜産業にサービス拡大。農家と小売りのマッチングサービスも展開。749
6701日本電気ITサービス大手。圃場管理システムや海外大規模農場分析ソリューションを提供。4,300
6702富士通サーバーで国内首位。生産から経営・販売まで企業的農業経営を支援するクラウドサービスを提供。9,549

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

注意事項

  • 本投資情報は、情報の提供のみを目的としており、取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 本投資情報の公開および各コンテンツの更新については、都合により予告なく休止、変更、削除する場合があります。
  • 本投資情報の掲載情報の正確性・妥当性等について、岡三オンラインおよびその情報の提供者が一切保証するものではありません。ご投資の最終決定は、お客さまご自身の知識、経験、投資目的、資産状況等に適う範囲で、ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本投資情報によって生じたいかなる損害についても、岡三オンラインは一切責任を負いかねます。
  • 本投資情報は、いかなる目的であれ岡三オンラインの許可なく転用・販売することを禁じます。
ページトップへ