2019年10月16日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー
【業界図鑑】空運業界 ~ 国内線で単価向上
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ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI原油先物が53ドル前後で推移している。6月の米国-イラン間の緊張の高まりや、9月のサウジアラビア石油施設攻撃により、一時的な上昇はあったものの、5月下旬以降はほぼ50ドル台で安定している。今回は、原油安の恩恵を受ける空運業界に注目してみたい。
1. スターフライヤーは円高もプラスに
空運大手2社のJALとANAでは営業費用のうち燃油費が2割を占めている。したがって、原油価格と株価は逆に動くことが多い。円高になると、燃油購入費が下がるので営業利益にプラスとなるが、外貨建ての国際線収入が減るため営業収益にはマイナスとなる。総じて円安の方が好ましいようだ。ただし、スターフライヤー(ANAが主要株主)は国内線事業をメインとしているため、円高がそのまま業績にプラスとなる。
<WTI原油先物日足チャート>

出所:岡三オンライン – 分析チャート
2. チェックインの効率化
空港カウンターでは自動化が進んでおり、JAL、ANA、ANAのシステムを利用しているAIRDO、ソラシドエア、スターフライヤーでは、座席番号が確定していれば、自動チェックイン機によるチェックインさえ必要なくなった。バニラエアやジェットスターでも国内線はWEBチェックインが可能となっている。受託手荷物も自動預け機に入れる無人化が世界で導入されており、混雑緩和、コスト削減が進んでいる。
3. 今後の見通し
米中貿易協議の進展と、英国の合意なきEU離脱回避への期待が高まっており、原油価格が今後上昇していく可能性は高い。さらに、米国の景気減速は2020年に見込まれているため、ドル箱といわれる日米路線の需要は弱含むことが予測される。高単価の欧州路線についても不透明感が強まっている。欧州景気は今年の春に底を打ったと見られていたが、楽観的過ぎたようだ。日本の航空会社は、当面競争の激しいアジア路線や国内線で、単価を下げずにシェアを維持することに注力すると見られる。したがって、搭乗手続きの一層の自動化、スマートフォンアプリやその他サービスの充実化などにより付加価値を高めることが欠かせないだろう。
<空運2社の業績推移>
日本航空

ANAホールディングス

注:20/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン-企業分析ナビ
4. 空運関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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