2019年02月20日
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【業界図鑑】食料品業界 ~ 中食が外食化から内食化へ回帰
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10月からの消費増税では、軽減税率の対象となる「中食」が「外食」に対して優位になることが予想される。その一方で、最近のトレンドであった「中食の外食化」が衰退する可能性もある。中食市場は今後も成長し続けるだろうか?
1. 複雑な軽減税率
軽減税率の対象は、新聞と酒類を除く飲食料品となる方向で議論されている。ただし、飲食料品において「食事の提供 (飲食設備がある場所で飲食させる役務の提供) 」は対象外となる。例えばコンビニ店内のイートインスペースで食べる場合は対象外だが、持ち帰る場合は対象となる。また、列車内のワゴン販売は、「飲食料品の譲渡」で対象となるが、列車内の食堂施設で食べれば「食事の提供」で対象外となる。実務上の混乱は避けられないだろう。
2. 中食市場の拡大
「中食」の定義は非常にあいまいである。ここでは「持ち帰ってすぐ食べられる日持ちのしない物」を指すこととする。日本惣菜協会のデータは、外食のテイクアウトや宅配を含まないが、中食市場の実態を示していると見て良いだろう。
2017年の惣菜市場規模は10兆555億円と、2007年の7兆9,491億円から26%成長している。食市場の中でも「内食」、「外食」と比べて伸び率が高い。高齢化、核家族化、女性の社会進出による調理の時短志向は今後も継続するため、まだ成長の余地はあるだろう。
<内食、中食(惣菜)、外食の市場規模推移(2007年~2016年)>
3. 消費増税で節約志向が高まり内食化へ
コンビニのイートインの優位性が軽減されるため、ファストフード店に回帰する人も増えるだろう。実際ファストフード店は店内をくつろげる快適な空間に改装し、「中食の外食」との差別化を行ってきている。また、素材を変えて品質を向上させたり、ヘルシーメニューを充実させたりしている。明確なコンセプトを持つ外食店であれば、消費増税後も業績は維持できるだろう。しかし、全体的に節約志向が高まっており、中食を警戒せざるを得ない。
中食を内食として活用するには、メインの料理は自分で作り、副菜をスーパーや百貨店で買ってきた中食にする、あるいはその逆のケースもある。または全て中食にして盛り付けるだけで、手作り料理のように成り立たせることも可能だ。市場が拡大しているとはいえ、ヘルシー、高級感が求められるなど品質のハードルは上がっている。中食メーカーは、今後も消費者嗜好の多様性と変化に対応し続けなければならないだろう。
注:19/2期または19/4期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン-企業分析ナビ
4. 中食関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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