【業界図鑑】サービス業界 ~ トップアスリートを支える企業

2020年03月25日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】サービス業界 ~ トップアスリートを支える企業

3月24日、東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることが決まった。一部の民間試算によれば、延期による経済損失は、約6,400億円に上るとのことである。しかし、中止となった場合は約4.5兆円と試算され、最悪のシナリオは回避された。

1. オリンピックの莫大な開催費用と維持費

ただし、オリンピック自体が赤字に陥ることは間違いない。まず開催費用は、3兆円程度に膨れ上がることが予想される(大会経費の見積もりは1兆3500億円)。2008年北京の4.3兆円、2012年ロンドンの4兆円に比べれば少額だが、スポンサー、ライセンシング、チケットなどによる収入は6,300億円しかない。

さらに問題なのが維持費である。施設の再利用に失敗すれば、自治体が負担し続けることになる。長野オリンピックのボブスレーなどに使われた施設は、今ではほとんど使われず、年間維持費が2億円弱かかっている。

2. トップアスリートの支援体制

日本の場合、個人競技のトップアスリートには、世界レベルで戦うための支援が行われている。例えばコナミスポーツクラブが設立した水泳競技部と体操競技部は、実際にトップアスリートを育成・輩出しているため、企業の広告としても効果的だ。

課題は団体競技の強化だろう。かつては、企業がスポーツ発展への貢献による企業イメージアップ、従業員のモチベーション向上、広告宣伝を目的として、チームの運営費をほぼ全額負担していた。しかし、1990年代からの企業リストラやJリーグ成功をきっかけに、企業はチームを保有するのではなく、スポンサーとして支援する方向へ向かった。地域密着型のクラブチーム化やプロ化が進んだが、撤退するチームも増えた。企業、スタッフ、場合によっては選手も、国内リーグで優勝することが最大目標になりがちなのは変わっていない。

各チームはスポンサーと長期契約を結び、安定収入を確保しなければならない。そのためには長期ビジョンを示し、結果を出すことが求められる。しかし団体競技は、世界では戦い方を変えなければならないことが多く、各チーム任せでは国全体のレベルアップは難しい。ある程度公的部門が介入し、インセンティブを導入する必要があるだろう。

3. 拡大するスポーツ市場

日本生産性本部余暇創研の「レジャー白書2018」によれば、日本のスポーツ市場規模は4兆760億円(前年比+1.2%)だった。政府はスポーツ市場規模を2020年に10.9兆円、2025年に15.2兆円に拡大することを目標としている。

<我が国スポーツ市場規模の拡大について【試算】>

(1)スポーツ市場規模の拡大について
  • 我が国のスポーツ市場規模は、現在(2012年時点、直近)、5.5兆円※1と試算されている。
  • 収益の上がるスタジアム・アリーナの建設・改修、競技団体等のコンテンツホルダーの経営力強化、新ビジネス創出、他産業との融合等のスポーツ産業の活性化策を通じて、2020年で10.9兆円、2025年で15.2兆円の市場規模への拡大を目指す。

※1 日本政策投資銀行による推計が最新(2012年)であり、5.5兆円と算出している。

(2)スポーツ市場規模(試算)の内訳(単位:兆円)

※2 株式会社日本政策投資銀行「2020年を契機としたスポーツ産業の発展可能性および企業によるスポーツ支援」(2015年5月発表)に基づく2012年時点の値。

出所:スポーツ庁 経済産業省

地方には、立派なスポーツ施設が次々と建設されている。オリンピックなどのイベント前には、世界のアスリートに練習場として提供されることもあり、地方活性化につなげることができる。一流アスリートから生み出された経済価値を最大化して、その収益の再投資を促すことが重要だ。スポーツ用品が売れればスポンサー収入につながる。試合だけでなく参加型イベントからも収入を得る。新しく建てられた施設には、一般向けのトレーニングルームやプールが併設されていることが多く、健康志向の高まりを、アスリートの事業環境への投資に回すことが期待されている。オリンピック後は建設・改修した施設を最大限に活用し、更なるアスリート強化及び経済発展につなげていかなければならない。

4. スポーツ施設関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
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注文画面
2802 味の素 味の素ナショナルトレーニングセンター(日本スポーツ振興センターが管理・運営)のネーミングライツパートナー。大会期間中、スタッフや調理師が現地に帯同する食事サービスも実施。調味用国内大手。 1,869.5
7906 ヨネックス カントリークラブ・ゴルフ練習場・テニスクラブの運営を実施。バトミントン、テニスで圧倒的シェアを持つ。中国で直販体制を構築。ブランドは「EZONE」「ASTROX」。 517
7936 アシックス 自治体のスポーツ施設等の施設管理事業に参画。スポーツ用品国内首位。シューズが売上の8割。ブランドは「アシックス」「オニツカタイガー」。 1,008
8022 美津濃 スポーツ施設施工・運営受託を手掛ける。スポーツ用品国内第2位。ウェア、シューズ、競泳、野球も強い。ゴルフビジネス再建に注力。 1,879
9766 コナミホールディングス スポーツ施設業界首位。ゲームが主力。社内に体操競技部、水泳競技部を持ち、世界で活躍するアスリートを輩出。2017年、JOCスポーツ賞の「トップアスリートサポート賞」を受賞。 3,385

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

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