【業界図鑑】ガラス・土石製品業界 ~ ガラスメーカーは利益率改善が課題

2020年03月11日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー

【業界図鑑】ガラス・土石製品業界 ~ ガラスメーカーは利益率改善が課題

2019年は米中貿易摩擦が長期化した。日本のガラスメーカーは海外売上高比率が高く、重要顧客が多い欧州や中国の景気が減速したため、業績の悪化を余儀なくされている。足元の原油安はプラス要因だが、対ユーロの円高はマイナス要因だ。ガラスメーカーは、この危機をどう乗り越えるだろうか?

1. 国内板ガラス出荷量は前年並みを維持

国内需要は1990年をピークに減少し続けているが、2016年以降の出荷実績は前年をやや上回って推移している。国内需要が大きく増加することは考えにくいため、大手メーカーは海外メーカーを買収または業務提携し、グローバル化している。国内2大ガラスメーカーは、AGC (旧旭硝子) と日本板硝子である。日本板硝子は、2006年に売上高が2倍以上ある英国ピルキントン社を買収し話題となった。

<板ガラスの出荷実績の推移 (2004年~2019年)>

注:換算箱:1換算箱は、厚さ2mm、面積9.29㎡の板ガラスの数量をあらわす単位。
出所:板硝子協会資料より作成

2. ガラス事業の利益率改善が課題

国内の板ガラスの出荷量が維持できている背景には、輸入の減少がある。板ガラスの地域別輸入推移を見ると、アジアからの輸入量が2012年から半減している。ガラス事業は中国メーカーの台頭もあり、大手メーカーでも営業利益率が5%に達するかどうかという水準である。国内の生産効率をより高めなければ、営業利益率は改善しないだろう。

「建築用ガラス」は、首都圏を中心として引き続き堅調だろう。しかし、「自動車用ガラス」の見通しは、世界全体で自動車生産台数の減少が見込まれるため厳しい。「液晶用ガラス」は、米コーニング社が5割、AGCと日本電気硝子がそれぞれ2割強のシェアを持つが、価格競争が激しくなるだろう。現時点では、ガラスメーカーは、10%前後の営業利益率が見込める電子事業や化成品事業に依存せざるを得ない。

3. 自動車産業のパラダイムシフトに期待

AGCは、ガラスに回路をプリントした「ガラスアンテナ」を生産し、自動運転向けのコネクテッドカー(つながる車、車同士や交通インフラと通信可能という意味)に対応。日本板硝子は、ゆがみの少ない高精度フロントガラスに注力し、ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD、速度や警告標識、ナビゲーションがボンネット上に浮かんでいるように見える) に対応。ガラス市場には中国メーカーのFUYAOやXINYIが、廉価品だけでなく高付加価値品にも参入してきた。日本メーカーは、自動車産業のパラダイムシフトをチャンスと捉え、市場をリードし続けることが求められる。しかし、高付加価値品の浸透には、まだ時間を要すると見られる。したがって、当面は他の素材メーカーと提携するなど、小規模な再編を行い、利益率改善を目指すだろう。

4. ガラス関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(3/11)
注文画面
4044セントラル硝子国内板ガラス第3位。板ガラスで世界トップクラスの仏国サンゴバン社と提携。2019年上期の営業利益率はガラス事業が0.5% (4億円)、化成品事業が9.1% (33億円)。1,822
5201AGC板ガラスで世界トップクラス。三菱系。2018年に「旭硝子」から社名変更。液晶パネル用ガラス基板では、米国コーニング社に次いで世界第2位。2019年度 (12月決算) の営業利益率は、ガラス事業が1.3% (93億円) 、電子事業 (液晶用ガラス基板等含む) が9.3% (256億円)。化学品事業が13.2% (630億円)。2,839
5202日本板硝子板ガラスで世界トップクラス。住友系。2006年に売上高が自社の約2倍あった英国ピルキントン社を約6,000億円で買収して以降、有利子負債が増加。金融費用の削減に取り組み、2016年の年間200億円から現在は140億円に減少。ガラス事業が売上高の99%を占める。2019年第3四半期累計の営業利益率は4.2% (180億円)。401
5204石塚硝子ガラス瓶・食器大手。飲料用紙パック等の紙容器やPETボトル等のプラスチック容器も生産。2019年度第3四半期累計の営業利益率は4.2%。王子ホールディングスと紙容器事業で提携すると発表。1,929
5214日本電気硝子液晶パネル用ガラス基板で世界第3位。2014年に有機EL照明用部材で仏国サンゴバン社と提携。2019年度 (12月決算) の営業利益率は6.2%。1,550

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

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