2020年03月04日
岡三オンライン証券株式会社
【業界図鑑】食料品業界 ~質・量ともに伸びしろがある家庭用冷凍食品
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新型コロナウィルスの感染拡大懸念により、外出を控える動きが出ている。全国の小中学校及び高校を、春休みまで臨時休校にするようにとの政府の要請もあり、ストックが可能な加工食品が売れている。今回は冷凍食品に焦点を当ててみたい。
1. 日本は家庭用冷凍食品では後発組
冷凍食品は、日本では業務用が先行して拡大した。欧米諸国では大型の冷凍冷蔵庫が早くから普及したため、家庭用の普及が早かった。一方、レトルト食品については、1968年に日本が初めて一般向けの製品化を実現。欧米諸国ではあまり必要性がなく普及しなかった。日本では1970年代から冷凍冷蔵庫が普及し、家庭用の冷凍食品の需要が拡大。しかし、1人当たりの消費額を見ると、カナダ、イタリア、米国、英国、ドイツ、フランスには遠く及ばない。フランスのピカール (picard) やスイスのヒーシュタント (Hiestand) は冷凍のクロワッサンなども製造しており、内容的にも欧米の方が進んでいる。日本の冷凍食品市場には、質・量ともにまだまだ伸びしろがあると見られる。
2. 加工食品の需要は拡大
農林水産省によれば、食品製造業生産指数(加工食品)は、2015年(平成27年)を100とすると2018年は101.8と拡大傾向にある。日本が2010年頃から人口減少局面に入っているが、単身世帯や共働き世帯が増えていることから、今後も加工食品への需要は期待できる。政府による「働き方改革」で、女性の労働参加率がさらに高まれば、手軽に家庭内調理を済ませたいというニーズも高まるだろう。
<食品製造業生産指数の推移>

注:ここでの「加工食品」は、食品製造業(総合)から飲料、酒類を除いたもの。
出所:農林水産省「食品産業動態調査」
3. 食の見直しにも対応
しかし、消費が高度化しており、時短だけでは消費者の心を掴めなくなっているのも事実だ。今後は安全性に加え、多様性、ファッション性、美容・健康推進といった要素が求められる。特に欧州では、食の見直しが進んでいる。日本人は塩分摂取過多の傾向があり、4月からは「食塩相当量」の表示が義務付けられることとなった。こうした動きにも対応する必要があるだろう。
ファミリーレストランやファストフード店では、プロの調理人がいなくても店舗を運営できるようになっている。ほぼ完成品に近い冷凍食品を活用することで、迅速にクオリティーの高い料理を提供できるような仕組みが出来上がっている。このようなB to Bの先進的ノウハウが今後はB to C向けにアレンジされ、冷凍食品とは思えないようなものが家庭にも浸透していくのではないだろうか。
4. 食料品関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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