【業界図鑑】情報・通信業界 ~ 今後有望なクラウドベンダーとは

2020年01月22日
岡三証券株式会社 岡三オンライン証券カンパニー

【業界図鑑】情報・通信業界 ~ 今後有望なクラウドベンダーとは

1月20日、世界のパブリッククラウドサービス市場 (IaaS・PaaS、下記参照) で4割のシェアを誇る「Amazon Web Services(AWS)」を運営するAWSジャパンは、2021年初めに「大阪リージョン」を開設すると発表。2011年には世界で5番目となる「東京リージョン」を開設している。「大阪リージョン」は、アジアパシフィック地域で9番目となる。

2018年に開設された「大阪ローカルリージョン」は、1つのアベイラビリティーゾーン (AZ: 各リージョンにある独立したデータセンター) のみで構成されるため、耐障害性に懸念があった。したがって、既に東京リージョンと契約している大企業ユーザーが、補完的な目的で利用しているのが現状だ。今回の事業戦略により、大阪も3つのAZをもつ通常リージョンへと昇格する。AWSが大阪に攻勢をかける背景には何があるのだろうか?

1. クラウドサービスのメリットとは

クラウドサービスとは、インターネット経由でリソース(サーバー、アプリケーション、データセンター、ケーブル等)を提供するサービスを指す。特に、複数の主体が共同利用するものをパブリッククラウドサービスと呼ぶ。個人がよく利用するFacebookやTwitterなどのSNSも、パブリッククラウドサービスである。法人利用では、サーバーやデータセンターなどのインフラ系が伸びてきた。

オンプレミス (インストール型) で構築していた社内基幹システムをクラウドヘ移行するメリットは何だろうか?1つ目は、導入コストが抑制できることである。料金が従量制または定額制であるため、初期投資を抑えたいスタートアップ企業には特に歓迎される。2つ目は、トランザクションの増加に合わせてCPUを追加するなどのスケールアップや、シャーディング (データベース分割) といったスケールアウトが簡単にできることである。3つ目は、バックアップの自動化とフェイルオーバー (障害発生時における予備の待機システムへの自動切り替え) により、システム監視の手間から解放されることである。

2. 急成長するクラウドサービス市場

クラウドサービス市場は、この5年で年平均35%のスピードで成長してきた。IHS Technologyの予測では、2021年には3,469億ドルに達する。成長率は鈍化しているものの、市場は当面拡大するだろう。

クラウドサービスは、大きく3つに分類できる。イアース (IaaS; Infrastructure as a Service)は、サーバー、CPU、ストーレージなどのインフラ系。パース (PaaS; Platform as a Service) は、アプリケーション開発・運用の基盤となるプラットフォーム系。サース(SaaS; Software as a Service)は、ソフトウェアパッケージを提供するアプリケーション系である。

<世界のクラウドサービス市場規模の推移及び予測>

注: CaaS(Cloud-as-a-Service):クラウドの上で他のクラウドのサービスを提供するハイブリッド型。
出所:総務省「令和元年版 情報通信白書」

3. 今後有望なクラウドサービスとは

冒頭にはアマゾンのAWSが世界シェア4割と述べたが、それはIaaSとPaaSに限定した話だ。SaaSを加えると、マイクロソフトのAzureが、2018年にAWSを抜いて首位に立っている。シェアはどちらも13%台。今後はIaaSやPaaSだけでなく、SaaSを加えた包括的なサービスに成長余地があると見られる。サービスがSaaSまで含んでいれば、クラウド移行にネックとなりやすいライセンスの問題も起きない。

Googleを持つアルファベット社も、GCPやG Suiteをつかって法人事業に注力している。データ分析プラットフォーム「BigQuery」が企業にとっての導入インセンティブとなりそうだ。しかし、Officeを導入している企業の数は圧倒的であり、Azureが今後優位となっていくのではないだろうか?Azureは、オラクルやSAPとも提携し、オープン化にも注力している。

また、国内ベンダーとしてはNTTコミュニケーションズや富士通が3、4番手につけているが、国内でシェアが1桁台という状況だ。投資対象としては、AWS、Azureをサポートする企業に注目すると面白いのではないだろうか?

4. クラウドサービス関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(1/22)
注文画面
3630電算システムGoogleクラウドのパートナー。情報処理サービス開発の中堅。収納代行拡大中。3,050現物買
3915テラスカイ米セールスフォースとAWSの導入をサポート。3,310現物買
4434サーバーワークスAWSの導入サポート及び保守代行の専業。9,570現物買
4726SBテクノロジーOffice365やMicrosoft Teamsなどの導入をサポート。自社サービス開発も拡大中。2,327現物買
4776サイボウズクラウド、パッケージソフトウェアの両方で業務効率化サービスを提供。業務改善ツール「キントーン」米国版をAWSに移行し事業拡大。1,825現物買

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

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