【業界図鑑】陸運業界 ~ 世界を見据えて車両を均一化するJR東海

2019年10月30日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】陸運業界 ~ 世界を見据えて車両を均一化するJR東海

10月30日、JR東海は初めて、次世代新幹線「N700S」のグリーン車を公開した。この新型車両は、東京オリンピックが開幕する2020年7月に営業運転を開始する予定だ。名前の「S」は「Supreme」からきているが、これまでの車両との違いは何だろうか?

1. 標準化を目指すJR東海

「N700S」で進化したのは、まずインテリアである。現行のN700系では普通車では窓側席にしかなかったコンセントが全席につけられた。座席のリクライニングも座面が沈む構造になり、進化している。また、駅に到着する前、天井の照明を明るくし、荷棚への置き忘れを防ぐ。車内デッキに荷物コーナーも設置し、外国人客にも配慮が見られる。しかし、大きな特徴は、「標準車両」の特長を有していることだと言える。この構造変化により、本来の16両編成から8両、12両などの短編成化が可能となった。世界標準を意識し、多彩な需要に対応できるようにした。

2. 新幹線の定義と各社の特徴

現在、新幹線と呼ばれる路線は全国9路線であり、四国以外の3島が結ばれている。1970年施行の「全国新幹線鉄道整備法」には、新幹線とは「200キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と定義されている。山形や秋田の新幹線は最高速度が百キロ台であり、定義から外れるため「ミニ新幹線」と呼ばれる。
東京と京阪神の移動は、飛行機2割、新幹線8割となっており (高速バス等除く)、新幹線が圧倒的に優位だ。東海道新幹線は、山陽新幹線と一体運用により、大阪よりも西に移動する人を含む。ビジネス利用客が7割弱であり、今後オンライン会議などが浸透していくとはいえ、需要は底堅いだろう。
JR東海は、世界を見据えた車両の均一化を進めているが、JR東日本、JR西日本、JR九州の他の上場企業は、乗客の嗜好を意識して多彩化している。

3. 非鉄道事業にも注力

東海道新幹線は、通勤路線並みの輸送密度を持つ。JR東海の収入の9割を占め、同社の営業利益率は45%と驚異的な数字となっている。1991年に新幹線資産を3社が買い取った際、JR東海には不利な価格だったが、償却資産が傾斜配分された。そのため減価償却費が大きくなっている。東北・上越新幹線は非償却資産である土地に傾斜配分されたので、減価償却費が少なくなっている。JR東海の実際の収益力は、会計上の見た目よりも突出している。

JR九州は、新幹線事業は収入の4割にとどまっており、収益性も高くないため、非鉄道事業に注力せざるを得ない。こうした事業でいかに収益性を高めるかが課題である。

<業態別旅客数量・旅客人キロ>

<新幹線旅客数量・旅客人キロ>

出所:国土交通省の資料より作成

<JR4社の業績推移>

東日本旅客鉄道

西日本旅客鉄道

東海旅客鉄道

九州旅客鉄道

注:20/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ

4. 鉄道関連銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(10/30)
注文画面
9005東急輸送人員は私鉄最大。鉄道利用客は増加傾向。売上高の内訳は、交通事業2割、不動産事業2割、ホテル事業1割、生活サービスが6割。9月2日、東京急行電鉄から社名変更。2,066
9020東日本旅客鉄道鉄道最大手。売上高の7割が運輸事業。新幹線収入は3割程度。山手線をはじめ高収益在来線を持つ。新幹線はビジネス需要が半分を占める。9,936
9021西日本旅客鉄道売上高の6割半が運輸事業。山陽新幹線、北陸新幹線の一部を運営。在来線は近畿圏の駅改良や沿線への大学移転及びインバウンド需要により堅調。宿泊特化型ホテルにも注力。9,378
9022東海旅客鉄道売上高の7割が運輸事業。そのうち9割が新幹線の収入。新幹線利用者の7割弱がビジネス利用。22,545
9142九州旅客鉄道売上高の4割が運輸事業。流通・外食事業の比率が24%と高い。ラグジュアリー型ホテルの開発に注力。3,615

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

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