【業界図鑑】J-REIT ~ 金融低下でマネーが流入

2019年06月12日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】J-REIT ~ 金融低下でマネーが流入

6月3日の米連邦準備理事会(FRB)議長の発言が、今後の利下げの可能性を示唆したものと捉えられ、より一層世界金利の低下圧力が高まってきた。5月にはマレーシア、ニュージーランド、フィリピン、6月に入ってオーストラリア、インドが相次いで数年ぶりに利下げを実施。日本でも10年物国債利回りが-0.1%台となっている。そこで分配金利回りが平均3.9%のJ-REIT(Japan Real Estate Investment Trust)の魅力度が高まっている。

1. マネーが流入するJ-REIT

世界的な金融緩和傾向から、リスクマネーが不動産などの高利回り資産へ向かいやすくなっている。2001年に2銘柄で時価総額2,603億円からスタートしたJ-REIT市場は拡大し、現在は63銘柄で時価総額14兆円超となった。2010年から日銀が買い入れを発表し、年間900億円の買い入れ枠を持っていることや、2014年からGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がポートフォリオに加えていることからも、市場は下支えされていると見てよいだろう。

<リート指数 日足チャート(6ヵ月)>

出所:岡三オンライン証券 - 分析チャート

2. 分配金利回りが高い

特にキャピタルゲインよりインカムゲインを志向する投資家にとっては、J-REITの分配金は魅力だ。J-REITは、「日本版不動産投資信託」であり、投資信託の中でも「会社型」の形態を持つ。(普通の株式投資信託や公社債投資信託などは、信託をファンドの受け皿とする「契約型」)。いわゆるペーパーカンパニー (外部運用モデル) であり、資産の70%以上を不動産関連資産にしなければならないというルールがある。また、期間利益の90%超を配当すること等で、法人税が非課税になるため、内部留保や法人税がない分、投資家への配分が大きくなっている。現在の東証1部全銘柄の平均配当利回りは2%程度であり、J-REITはその約2倍弱である。

J-REITの決算期は12月、1月、2月のものが多く、そうした銘柄は半期にあたる6月、7月、8月に分配金の権利確定となる。理論的には、権利落ちで分配金分だけ価格が下がるが、より大きく下がるケースも多い。また、分配金を受け取ると税金がかかるため、手取りはより少なくなる。権利落ちの前か後か、どちらが有利かは一概には言えない。

3. 有望なセクター

用途別資産取得額を見ると、長期的にはオフィス系が伸びている。しかし高値圏にある銘柄が増えているため、利回りは総じて低下している。収益が安定的な賃貸住宅系、今後もインバウンド需要が見込まれるホテル系、物流施設系は手堅いだろう。ヘルスケア系も老人ホーム等でのトラブルによる賃料低下のリスクはあるが、価格が低いため高い利回りが得られる。

4. J-REIT銘柄

コード 銘柄名 概要 終値
(6/12)
注文画面
3282 コンフォリア・レジデンシャル投資法人 分配金利回り3.37%。成長性を重視した居住用資産への投資と東急不動産HDの活用が基本方針。投資先は東京都が9割。 302,000
3287 星野リゾート・リート投資法人 分配金利回り4.79%。スポンサーは星野リゾートで、投資対象は地方のリゾートホテルや旅館から、都市のシティホテルやビジネスホテルに拡大。 538,000
3459 サムティ・レジデンシャル投資法人 分配金利回り5.92%。地方都市で良質なアコモデーションアセット等への投資を行う。 108,100
3468 スターアジア不動産投資法人 分配金利回り5.50%。オフィス、物流、住宅とホテルでほぼ3等分の割合。東京圏の投資割合を70%とする方針。 114,000
3471 三井不動産ロジスティクスパーク投資法人 分配金利回り3.64%。先進的物流施設のブランド「MFLP」を中心に、ロケーション、クオリティ、バランスを重視した物流施設ポートフォリオを構築。 350,000

分配金利回りは2019年6月11日終値より計算

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5 分でチェック!世界の経済指標の読み方」(毎週3回程度)配信中。

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