【業界図鑑】陸運業界 ~ タクシー配車サービスはローカライズかグローバライズか

2019年03月20日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】陸運業界 ~ タクシー配車サービスはローカライズかグローバライズか

日本でタクシーに乗りたい時は、タクシー乗り場に並ぶか、タクシー会社に電話して呼ぶのが一般的だ。しかし、利用者の利便性からすれば、日本のタクシー業界はかなり遅れていると言わざるを得ない。東南アジアの途上国で日常的に利用されているサービスが、これから日本で本格化しようとしている。

1. 世界の配車サービス

例えばカンボジアに行くと、「Grab」というシンガポールの配車サービスと、「PassApp」というローカルの配車サービスがある。ドライバー目線でみれば、Grabは予め利用者が予約したルートで料金が確定するので追加料金が取りにくく、取られるフィーも多いため、PassAppが好ましいようだ。観光客目線でみれば、ダウンロードや設定の手間もあるため、他国でも使えるGrabが魅力的だ。現地では2社がしのぎを削っている。

いずれにしても、プノンペン空港から街中まで7~8ドルであり、ライセンスタクシーの半額程度なので競争力は高い。空港のすぐ前のエリアはライセンスタクシーが占拠しているため、配車アプリのチャット機能や電話でドライバーとやりとりをし、分かり易い場所に歩いて迎えに来てもらうなどしなければならないという難点はある(日本の場合、ドライバーの語学力がネックになる可能性が高い)。しかし、こうした既得権益のタクシーを守る規制も緩和される可能性があり、今後一層競争が激化するだろう。

Grabは当初、ライセンスを持ったタクシーに限定した配車サービスだったが、2018年に世界最大の米「Uber」から東南アジア8ヵ国での事業を引き継ぎ、いわゆる個人の「白タク」を含むことで急速に普及した。Uberは2016年に中国でも「滴滴出行(ディーディーチューシン)」に事業を売却している。世界最大サービスの会社にとっても、ローカルサービスや既得権益を守る規制との戦いは容易ではない。

2. Uberが日本に布石を打っている

2014年8月、Uberは東京都内全域で本格的にタクシーの配車サービスを開始した。しかし、2015年3月、国交省の指導が入りにサービスを停止。事実上撤退したかに見えたが、その後名古屋、大阪、仙台でタクシー配車サービスを開始。さらに2019年3月、タクシー大手の第一交通産業との提携し、欧米人に人気の広島の一部地域で、Uberアプリを使って第一交通産業グループのタクシーを呼べるようにすると発表した。今後のライドシェアへの規制緩和を予想し、着々と布石を打っている。

日本政府はタクシー業界の規制緩和に積極的だ。最大の理由は需要喚起だろう。法人利用はリーマンショックで落ち込んだ後横ばいだが、個人利用は節約志向の高まりで減少傾向が続いている。政府としては、訪日外国人客や高齢者の利用者を促したいのである。供給面ではドライバーの高齢化に加え、2009年、2014年の規制強化(減車要請や増車禁止)によって、需給は引き締まりつつある。

<ハイヤー・タクシーの車両数及び輸送人員の推移(1999年~2016年)>

出所:国土交通省資料より作成

3. 日本の配車サービス

現在の日本では白タク行為(第二種免許を持たない自家用車によるライドシェア)が禁止されている。安全確保や事故発生時の補償に懸念があるため、解禁まで行くかは不明だ。また利用者の不安解消のために事前料金確定の方針を決めたが、途中でルートを変更した場合のトラブルを防ぐためのルールをしっかりと定めなければならないだろう。

配車アプリとしては既に、日本交通の「ジャパンタクシー」やソニーとタクシー会社7社の「みんなのタクシー」などがある。それに加え、さまざまなライドシェアサービスが生まれつつある。例えばスポーツ観戦のスタジアムなどは駅から遠い場所にあることが多く、タクシーの相乗りがしたくなる。ZERO TO ONE社の「nori-na」がそのマッチングアプリを提供している。投資家としては、ライドシェアについては今後どこまで規制緩和をするのか、ローカルサービスがグローバルサービスにどこまで対抗できるかに注目する必要があるだろう。

<タクシー3社の業績推移>

第一交通産業

神奈川中央交通

大和自動車交通

出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ

4. タクシー関連銘柄

コード 銘柄名 市場 概要 終値
(3/20)
注文画面
9034 南総通運 東証JASDAQ
スタンダード
千葉地盤。貨物運送、倉庫、タクシーを手掛ける。 -
9035 第一交通産業 福証上場 九州地盤。Uberと提携。 778
9049 京福電気鉄道 東証2部 京都、福井地盤。京都観光でバス事業堅調。 2,940
9081 神奈川中央交通 東証1部 小田急直系。バス事業、マンション販売が好調。 3,865
9082 大和自動車交通 東証2部 都内タクシー大手4社の一角。アプリや自動運転に投資。台湾タクシー最大手「台湾大車隊」と提携し、相互配車アプリを提供。 1,105

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

株式会社Good Team 代表取締役社長

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。

経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。

2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。

主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

メルマガ「5分でチェック!世界と日本の市場動向」(毎週火、水、木、金曜日) 配信中。

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