2019年03月06日
岡三オンライン証券株式会社
【業界図鑑】サービス業界 ~ 買収・提携を含めた戦略が問われる学習塾
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2020年度から小学校において、英語の教科化、プログラミングの必修化が始まる。大学入試のセンター試験は「大学入学共通テスト」に変わり、国語と数学ではマークシート式に加えて記述式問題が採用されることになる。また英語では、「書く」「話す」能力も問われる方針で、民間試験が導入されることになった。ケンブリッジ大学英語検定機構、ブリティッシュ・カウンシル、国際ビジネスコミュニケーション協会 (TOEIC実施) などの参加が認められている。学習塾業界は、これらの変化にどう対応していくのだろうか?
1. 業界再編が続く
2015年は、通信教育や「東大進学教室」などの塾を運営するZ会 (非上場) が、東証上場大手「栄光ゼミナール」を買収したことが話題となった。栄光ホールディングスは、首都圏で展開し業績も好調だった。2010年には「シェーン英会話」を買収している。それでもZ会のTOB(株式公開買い付け)に賛成し傘下に入ったのである。内部分裂などもあったようだが、その後業界再編の流れは加速した。
2017年は、出版をメインとする学研ホールディングスが、千葉中心に塾を展開する市進ホールディングスに33.3%出資し持分法適用会社化した。また「東進ハイスクール」で有名なナガセが、20億円で買収した「早稲田塾」の校舎全23校のうち11校を閉鎖している。
2. 少子化でも市場拡大
少子化による市場縮小が懸念されている学習塾業界だが、教育熱心な親が増えていることもあり、金額ベースでは成長している。最近の傾向としては、集団指導から個別指導に需要がシフトしていることが挙げられる。個別指導はコストがかかるため、経営側としては単価を上げざるを得ない。最近では単価の頭打ち感も指摘されている。競争が激しいことに変わりはなく、大手学習塾の営業利益率は総じて5%強にとどまっている。
<学年別にみた学校外活動費の推移(10年・調査6回)>
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3. ノウハウの優位性低下で買収・提携が加速
静岡を拠点とする「秀英予備校」は、一時全国展開を目指したが、競争激化で校舎をリストラした。2018年夏に個別指導とeラーニングのために16校舎を新設している。地域的な校舎拡大は余程のブランド力がないと難しいだろう。実際、早稲田ゼミナールは茨城の「水戸アカデミー」や千葉の「集学舎」を買収したが、ブランドを残している。このように、地域ブランドを買収する動きは今後も起こり得る。第二次塾ブームの1970年代にできた塾も多く、創業者の高齢化も進んでいるため、再編は加速すると見られる。
また、前述の学習指導要領改訂や大学入試改革により、ブランド塾のノウハウの優位性も低下する。教育内容は社会人にもつながるものが増え、子供から大人を顧客とする塾が増えるなど垂直統合化するだろう。社会人向けの教育サービス会社からの新規参入が今まで以上に脅威となりうる。学習塾は対応に追われることになるが、買収や提携を通じて講師やノウハウを確保するのではないだろうか?
<学習塾3社の業績推移>
4. 集団指導塾関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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