2019年02月06日
岡三オンライン証券株式会社
【業界図鑑】サービス業界 ~ ブームが去りビジネス本番を迎えた民泊
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米国民泊仲介業のエアビーアンドビー (Airbnb) が2014年に日本に上陸し、2016年からいわゆる民泊ブームが起きた。インバウンド需要の急増によるホテル不足が背景にある。2017年に入ると、ワンルームにベッドが置いてあるだけの不衛生な感じの物件が減少し、個性のある洗練された物件が増加し始める。しかし、2018年にはホテル不足が解消されていき、さらに6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行により民泊ブームは終わった。今後民泊は復活するのだろうか?
1. 民泊とは何か?
「民泊」に法律上の定義はないが、現在では自宅、別荘や賃貸用物件の一部または全部を主にネットを通じて継続的に他人に貸すビジネスを指す。民泊新法が施行される前、仲介サイトで全国約6万件ほどの物件が登録されていた。ところが新法施行の直前に、観光庁が仲介業者に対し、違法物件を取り消すよう通知。その結果、8割弱の物件が削除された。現在は3万件程度となっている。
民泊の形態は3種類ある。1つ目の旅館業法に基づく「簡易宿所」は、年間営業日数には制限がないが非常階段が必要であり、許認可基準は緩和されたもののハードルは低くない。2つ目の国家戦略特区法に基づく「特区民泊」も、年間営業日数に制限がないが、滞在日数に下限がある。東京都大田区、大阪府、福岡県北九州市などに1000件超存在する。3つ目の民泊新法に基づく民泊は、年間営業日数が180日以下だが、住宅専用地域でも運営できるのが魅力だ。許可制の簡易宿所と異なり、届出制でハードルは低い。ただし、自治体の条例やマンション管理規約に従う必要がある。
2. ホスト側から見た民泊
投資家にとって、民泊ビジネスは普通の不動産賃貸業と比べて手間がかかる。そのため高利回りか、おもてなしをすること自体に価値を感じない限り選択肢になりにくい。年間180日以下しか営業できず、通常は時期によって価格を調整するため、投資効率の計算は難しい。また、ホテル不足の受け皿としての役割は終わり、価格か差別化で勝負せざるを得ない状況となっている。例えば富裕層の外国人をターゲットとする場合、センスとコストが必要だ。
訪日外国人による2017年7~9月期の利用宿泊施設は、ホテル78.1%、旅館21.9%に次いで「有償での住宅宿泊」が14.9%だった。国内外に係わらず、個人旅行の人気が高まっていることは、民泊にとって追い風となるはずである。
<国籍別にみる「有償での住宅宿泊」利用率 (2017年7~9月期)>
3. 比較サイトの発達でビジネス本番へ
民泊サイトは、Airbnbの他にも中国最大手の途家(Tujia)が日本に上陸している。楽天トラベルやブッキングドットコムなど、従来ホテルのみを掲載していたサイトでも民泊予約が可能となった。複数サイトに掲載した時のダブルブッキング防止や価格調整に便利な「サイトコントローラー」の対象サイトも広がっているため、今後は価格競争が激しくなることが見込まれる。
大手ホテル業者も民泊の価格に引っ張られ、利益率の確保に迫られるだろう。AIを活用したホテルを展開するエイチ・アイ・エスや中国のアリババとまでは行かなくても、中間層をターゲットとするチェーンホテルは無人化の方向へ向かうのではないだろうか?そうなれば、人との交流を楽しみたい、日本文化を体験したいというニーズを捉えやすいのは民泊であり、ビジネスとしても有望視できるのではないだろうか。
<業者マッピング>
4. 民泊関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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