2019年01月23日
岡三オンライン証券株式会社
【業界図鑑】輸送用機器業界 ~ 再び統合機運が高まる自動車業界
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来週から日本企業の決算発表が本格化する。中でも2月6日に予定されているトヨタ自動車の第3四半期の決算発表は、最も注目度が高いと言っても過言ではない。自動車産業は、今でも日本の基幹産業であり続けている。日本自動車工業会のデータによれば、日本の全就業人口6,530万人のうち、自動車関連が539万人と8.3%を占めており、マクロ経済への影響が大きい業界である。そのため、新車販売台数はマクロ経済分析にも重要指標として用いられる。その業界に「100年に一度の変革期」が訪れていると言われているが、今回は販売台数と為替というオーソドックスな視点から業績を見ておきたい。
1. 世界販売台数は鈍化
2018年の国内新車販売台数は、527万2,067台 (前年比+0.7%) だった。登録車334万7,943台 (-1.3%) の不振を軽自動車192万4,124台 (+4.4%) がカバーした。全体に占める軽自動車の比率は、36.5%と上昇傾向にある。乗用車のブランド別シェアは、トヨタ45.0%、ホンダ13.0%、日産12.4%、マツダ5.7%、スズキ4.4%。シェアを伸ばしたのは、前年の検査不正の反動があった日産、マツダ、スズキだった。
世界全体を見れば、日本市場の台数シェアは5.4%程度に過ぎない。2017年の世界販売台数は9,680万台で、中国が30%、米国が18%、欧州が22%。2018年の全体の数字はまだ出ていないが、中国が-2.8%と28年ぶりの前年割れとなったことは業界の陰りと言える。日本メーカーにとってより重要な米国では+0.3%となったものの、ライトトラック (ピックアップトラック、SUV) が+8.0%で、乗用車の-13.1%をカバーした格好だ。今後アジアでは成長が期待できるものの、2010年以来プラス成長を維持してきた業界は転機を迎えている。
2. 業績予想の修正はあるのか
2019年に入り、ドル円が110円割れした状態が続いている。ユーロ円も124円台で推移している。大手メーカーは想定為替レートを円安に見ており、このまま円高が定着すれば、業績予想を下方修正しなければならないだろう。
<想定為替レートと営業利益への感応度>
3. ライバル、異業種とも提携
中国の新車市場が28年ぶりに縮小し、自動車業界で再編の機運が再び高まってきた。今後は企業間の提携やM&Aが一層活発化することが予想される。1月15日には、米フォード・モーターと独フォルクスワーゲンの大手メーカーが、商用車や中型ピックアップトラックの製造で提携すると発表。EVの開発でも提携する見込みである。また1月22日には、トヨタ自動車が異業種のパナソニックと、車載用角形電池事業の合弁会社設立で合意したと発表。
EV化に伴い、研究開発費の負担だけでなく、自動車部品も縮小が見込まれる。部品が少なくなり参入障壁が下がることで、異業種からの参入も考えられるため、ライバルであっても提携せざるを得ない状況になっている。統合と分裂を繰り返してきた業界だが、これまで以上にシナジーを得られるかどうかの見極めが重要になるだろう。
<完成車メーカー5社の業績推移>
本田技研工業

スズキ

注:19/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ
4. 完成車関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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