2019年04月17日
岡三オンライン証券株式会社
【業界図鑑】小売業界 ~ カフェ業界は顧客層の空白を埋める戦略へ
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来週から2019年3月期の決算発表が本格化する。多くの企業が増収減益となることが予想されるが、背景にあるのは人件費と物流費の増加だ。その一方で、消費者の節約志向が高まっており、最終消費財の値上げには慎重にならざるを得ない。このような事業環境において、カフェ業界はどのような経営戦略を採るのだろうか?
1. カフェ市場は拡大
日本国内でのコーヒー消費量を見ると、1998年が36.4万トンだったのに対し、2018年は47.0万トンとこの20年間で30%増加している(全日本コーヒー協会)。ただし、ピークは2016年の47.2万トンであり、頭打ち感が出てきた。
喫茶の市場規模を見ると、2017年の売上高は1兆1,358億円だった。2018年は、売上高が前年比+0.8%で、店舗数+0.7%、客数-1.0%、客単価+1.8%(日本フードサービス協会)。ここ数年、市場が緩やかに拡大しているとはいえ、客数は低迷している。
<喫茶市場規模の推移(1994年~2018年)(前年比)>
2. 満足度のカギはコストパフォーマンス
戦後は純喫茶、1950年代は名曲喫茶、1960年代はジャズ喫茶が人気で、1970年代に喫茶店という形態では最盛期を迎えた。1980年代にドトールコーヒーが誕生し、いわゆるカフェブームが起こる。1996年には外資系のスターバックスコーヒー第1号店が銀座に誕生し、タリーズコーヒーやセガフレードなどの外資系コーヒーショップの参入が続いた(スターバックスコーヒージャパンは、2015年に米国スターバックスコーヒーの完全子会社となり日本では上場廃止)。
現在のカフェを大きく分類するとすれば、イートカフェ、高価格カフェ、セルフサービスカフェの3形態になるだろう。依然として、多くのビジネスパーソンが利用するセルフサービスカフェの人気が高い。サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数」によれば、2018年のカフェ部門1位は、「ベローチェ」、第2位は「ドトールコーヒー」だった。節約志向の高まりもあり、コストパフォーマンスの高さが満足度に繋がっている。
3. 各社が新規顧客開拓へ
前述のとおり、喫茶市場は客単価を上げることで拡大してきたが、今後は厳しくなるだろう。したがって、カフェ業者は新規顧客の開拓に注力せざるを得ない。実際に、郊外へ積極的に店舗を出す傾向が鮮明となっている。狙いはファミリー層、主婦層、シニア層の取り込みだ。ビジネスパーソンも一人になる時間を求めて家の近くのカフェに行く人が多い。立地特性に合わせて、ゆったりとした店舗を運営し、非日常感を演出している。ただし、スターバックスは数年前からシニア層への訴求を目指しているが、なかなか思い通りにいかないようだ。ブランドイメージを損なわずに、新規顧客を開拓することは容易ではない。
逆に、レトロな居心地の良さを追求していたコメダ珈琲が、コンセント設置やWi-Fi接続に注力し始めている。カウンター席や2人席を増設中であることからも、新規顧客層を意識していることが分かる。狙いどおりの効果を得たとしても、既存客が離れてしまうリスクもあり、各社とも難しい舵取りを迫られている。
<飲食チェーンのマッピング>
4. カフェ関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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