武部力也の週間為替相場見通し(6/14週号)

2021年06月11日

ワクチン接種後の円を探る局面

ドル円予想レンジ 108.75-110.75円

「今年の10月から11月にかけては必要な国民、希望する方、全てを終えること、そうしたことも実現したいと思います」―。これは6/9の衆参両院国家基本政策委員会合同審査会における菅首相の発言だ。菅政権発足以来、初めて行われた党首討論会である。立憲民主党・枝野代表からの新型コロナウイルスのワクチン接種について問われた菅首相は完了時期を初めて明言している。

ワクチン接種後の円見通し

バイデン米大統領が独立記念日の7/4までに、成人の7割が少なくとも1回のコロナワクチン接種を終えるとの目標を掲げるなか、周回遅れは否めないが、我が国においても10-11月までに”希望国民、総接種”という一つの目途が立った格好だ。
5/17公表の2021年1-3月期実質GDP長率は前期比年率マイナス5.1%だった。恐らく4-6月期もゼロ近傍かそれ以下の成長に留まる見通しだがワクチン接種の見通しが今回の党首討論で見え始めたことから今後は個人消費の悪化も低減化し、抑制されてきたサービス消費も活発化する期待が高まるところだ。景気回復感は強まり、感染リスクも徐々に低下するなら21年度後半から22年度にかけては景気停滞感から抜け出す可能性となる。日本株には明るい見通しだ。
衆議院任期満了、総選挙時期も睨むなら政権与党・為政者側としては日本株・日経平均の上伸性を有権者に向けてアピールし、下げさせる訳にはいかないタイミングでもあろうか。
では、日本円はどうか。1月からの円安基調は継続し、目先、壁となっている1ドル110-111円を超えていけるのだろうか。筆者のイメージは対ドル以外、対主要通貨での円安がドル円を支援するとしたアプローチの場面を描いている。

ワクチン接種後の日銀見通し

新型コロナワクチン接種に遅れを取った日本もようやく主要国との足並みを揃えはじめた。
そうしたなかでドルの行方を左右するバイデン政権、そして米連邦制度理事会パウエルFRB議長は米景気回復見通しを強める一方、金融政策正常化への舵切には極めて慎重に映る。過去号において筆者はバイデン大統領が連邦準備改革法(Federal Re-serve Reform Act)での「雇用」「物価安定」とした二つの責務に「人種の平等(racial equity)」を加えるべきとの主張を示した経緯から、米雇用統計での人種別失業率格差を縮小するとした意向を改めて示せば、FRBの金融正常化の道は極めて遠い可能性を挙げた。それは理想と現実の乖離に悩むバイデン政権とFRBの苦悩は結局、不動、とした見方に繋がるからだ。
そこで注視しているのはFRB、米ドル以外である。4月以降、カナダ中銀やニュージーランド準備銀、そしてスウェーデン中銀でもインフレ見通しの上昇修正、利上げや緩和縮小と言った金融政策正常化のタイミングを模索し始めている。
では『日銀も主要中銀の動きに追随すると思うか』、と問われれば、『異次元緩和の手綱を緩めるとは到底思えない』、と答えるのが市場参加者の見立てではないか。
4/27に日銀が公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では2023年度の物価見通しは僅か1.0%の上昇見込みであり2%目標をはるかに下回る見通しを示している。つまり少なくとも2023 年末までは現状の金融政策を維持するものと予想され、6/17-18の日銀金融政策決定会合や黒田総裁の会見でも示される可能性が極めて高い。
日本はワクチン接種が進んで経済活動の正常化が進んでも金融政策の正常化には程遠く、特に消費者物価指数CPIでのインフレ見通しは低く、賃金上昇の萌芽感さえも伺えないのが実際だ。一方、他国はコロナパンデミック以前のCPI水準に戻れば金融政策正常化は至極当然となる。しかし頑強な日本の低インフレ解消が見込みづらいなかでは対ドル以外での主要通貨に対して、低金利の円を調達し高金利通貨に換えて資産運用する、いわゆる「円キャリートレード」への動きが再燃する可能性もゼロ%ではないのではないか。
5/27に米報道機関のインタビューに対し黒田総裁は「日本銀行の強力な金融緩和はパンデミックから経済が回復した後も継続されるだろう」と明言している。当面は緩和策により円安浮揚力は継続、とした読みで捉えることが出来よう。

6/14週ドル円焦点

上値焦点は6/3・4高値圏110.33-345、4/6高値110.56、4/2・5高値110.76、4/1高値110.855、そして3/31高値の110.98がゴール。                                下値焦点は6/7・8・9安値圏109.215-18、5/27安値109.03。割れたらテクニカル観点から日足一目均衡表雲の帯上限108円後半支援意識。下抜けると5/25と5/19安値となるダブルボトムの108.555、同様にボトム形状形成の5/11-10安値圏108.34-33留意。

出所:岡三ネットトレーダープレミアム

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