武部力也の週間為替相場見通し(1/13週号)

2020年01月10日

「米・イラン」全面戦回避後の円読み場面

ドル円予想レンジ 108.00-110.60円

 「憲法改正を私自身の手で成し遂げていくという考えには全く揺らぎはありません」-。これは1/6の安倍首相・年頭記者会見での発言だ。首相在任中の実現に改めて意欲を示して、まずは1/20召集の通常国会から憲法改正原案の策定を加速させたい考えだ。そのためにも有権者(≒国民)からの支持は必須であり、10月増税後の景気腰折れ、株安を誘引しかねない円高進行には目配せを強めることだろう。

中東情勢の経緯と沈静化。その後…

 その安倍首相は、2019年6月に米国との橋渡し役を自負してイランを訪問。年末12/20にはイランのロウハ二大統領が来日して官邸で会談。イラン・米国との対立で緊張が高まるなか、中東地域の安定化に向けて奔走している。しかし事態は悪化し、同時期に親イラン派武装組織のイラク拠点を米軍が空爆すると、12/31-1/1にイラク首都バグダッドの米大使館敷地内に反米群衆が乱入する事態が発生。米国防省はイラン革命防衛隊司令官がこれを扇動したと判断し、1/3に米軍はドローン空爆を執行。同司令官は“イラク・バグダッド”で死亡した。対してイランは報復措置として前出の司令官名を冠した「殉教者ソレイマニ作戦」とした報復に出て、イラク駐留米空軍基地を地対地ミサイルで攻撃。市場は軍事衝突へのエスカレーションに警戒を抱き、外為市場では中東情勢を巡るキーワードが組まれたAIアルゴリズムトレードが発動。安倍首相も目配せしているであろうドル円は、報道が伝わってから約90分後には1円近くの円高が進行し、1ドル107円台後半へ推移した。しかしその後はイラン・米国の双方から更なる攻撃意思の抑制が示され、1/8の深夜には1ドル109円台回帰、とした荒っぽい動きを見せている。両国とも事態のエスカレートは避けたい考えなのか、イラン側からのミサイル攻撃に対し米側は死傷者ゼロ。事前のウラ通知説まで報じられた。ここでのポイントは1点。1/8深夜にトランプ大統領が「American strength, both military and economic, is the best deterrent(アメリカの力は軍事と経済の両方が最高の抑止力である)」、と軍事での反撃に言及せず、経済圧力を軸に事態の鎮静化に努めているように市場に映ったことだ。

 では今後、米国・イラン情勢を巡る動きは落ち着きを見せるのだろうか。筆者が警戒するのは3点だ。ひとつは1/29ファーテメ・ザフラー殉教日(イスラム教開祖ムハンマドの娘)、2/11イスラム革命記念日(1978年にホメイニ師などの精神的指導者が中心にとなり親米パーレビ国王政権を打倒)、2/21イラン国会選挙などを控え、イスラム教の厳格な教えに基づいた国威発揚的な動きをイランが強める可能性。2つ目はトランプ大統領が2019年6月、9月に対イラン攻撃の中止を直前に命じたとされ、戦争回避がメインシナリオと読まれていたにも関わらず、今般は米軍増派、展開の指示が早く、米大統領選挙を意識した求心力とリーダーシップ向上の姿勢が邪推されたこと。つまり過度な挑発には受けて立つ可能性があり、偶発的軍事衝突の可能性は今後も0%ではないこと。3つ目は日本・東京がイラン・テヘランと時差が5時間半先行していること。現地での事態発生に対し、東京市場は欧米市場比でやや出遅れを感じる点である。筆者は持続的な円高進行を見込んでいないが、中東情勢により円安浮揚力や期待が抑制、低減される場面は今後もあり得るのではないか、と読んでいる。

1/13週ドル円焦点

 1/15の米中「第1段階」通商合意書の署名予定や、1/20米休場(キング牧師誕生日)控えでの調整動意警戒。上値焦点は2019/12/2高値109.74、5/30高値109.935、110.00。超えたら5/23高値110.37、5/22高値110.635。下値焦点は日足一目雲帯 (109.017-108.107)、200日線108.628、12月日銀短観企業輸出レート107.83、1/6安値107.64を推考。

出所:岡三ネットトレーダープレミアム

※岡三オンライン証券の対東京金融取引所(くりっく365)における買い比率
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