渡部 一実 氏
株式会社ストックボイス 記者
産経新聞記者として政治経済報道に携わる。2014年からストックボイス記者。
2019年12月17日
岡三オンライン証券株式会社
足元の東京市場で日経平均株価は2万4000円の大台に乗せ、昨年10月以来の高値を取った。11月26日付拙稿『兜町は「2万4000円!」年末株高、2つの推進力』で指摘した通り、良好な需給環境と米中の歩み寄りがリスクオンムードを醸成し、川崎汽船(9107)やDOWAホールディングス(5714)、村田製作所(6981)といった景気敏感株が強い動きをみせている。
【日経平均:週足:2年】
……と、ここまではいいのだが、肝心の「米中合意」が安心できない。
今回の合意では中国による米国産農産物購入を決めたが、購入実績を四半期ごとに米側が「検証」し、ここで満足が得られなければ、合意違反として米側が追加関税を発動する「原状回復(snapback)」条項が設けられた。つまり、米国の完勝だった。
「戦は五分の勝ちをもって上、七分は中、十分は下。五分は励みを生じ、七分は怠り、十分は驕りを生ず」(武田信玄)。
今回は双方納得ずくの「合意」ではなく、よく言ってせいぜい「休戦」程度。勝ち過ぎの米国に中国が今後反発する恐れがあるし、そもそもトランプ大統領の「ちゃぶ台返し」は日常茶飯事だ。早くも中国人民日報系メディアは「文書での合意は簡単ではない」と報じており、状況は依然不透明といっていい。
年明けからは本格的に米国大統領選も絡む。有権者受けが一番いい「減税」「バラマキ」には議会の承認が必要だし、ウクライナ疑惑・弾劾裁判ではトランプ氏は「俎板の鯉」の立場。となれば、氏が主体的に切れる最強のカードは大統領権限の大きい通商問題となる。これを簡単に手放す訳はないから、今後も引っ張れるだけ引っ張るだろう。大統領選が事実上スタートするアイオワ州予備選(2月3日)、11州が予備選を行うスーパーチューズデー(3月3日)付近で、トランプ有利に働くような何らかの動きがあるかもしれない。
米国では大統領選前後の株価は強い、のジンクスがある。大統領任期3年目には翌年の選挙をにらんだ景気対策を打つケースが多く、戦後各大統領の任期3年目のNYダウは対前年で17回上昇・1回下落(勝率94%)と滅法強い。任期4年目、つまり自身の再選も含む大統領選の年も13回上昇・5回下落(同72%)とかなり強い。これは一応、日本株にも当てはまり、東証再開後の1949年以降17回の大統領選年で日経平均は12勝5敗(同70%)だ。
選挙年 | 当選者 | 日経平均年末終値 | 対前年騰落率 |
1952年 | (共)アイゼンハワー | 362.64 | 118.4% |
1956年 | (共)同 | 549.14 | 29.0% |
1960年 | (民)ケネディ | 1,356.71 | 55.1% |
1964年 | (民)ジョンソン | 1,216.55 | -0.7% |
1968年 | (共)ニクソン | 1,714.89 | 33.6% |
1972年 | (共)同 | 5,207.94 | 91.9% |
1976年 | (民)カーター | 4,990.85 | 14.5% |
1980年 | (共)レーガン | 7,116.38 | 8.3% |
1984年 | (共)同 | 11,542.60 | 16.7% |
1988年 | (共)父ブッシュ | 30,159.00 | 39.9% |
1992年 | (民)クリントン | 16,924.95 | -26.4% |
1996年 | (民)同 | 19,361.35 | -2.6% |
2000年 | (共)子ブッシュ | 13,785.69 | -27.0% |
2004年 | (共)同 | 11,488.76 | 7.6% |
2008年 | (民)オバマ | 8,859.56 | -42.1% |
2012年 | (民)同 | 10,395.18 | 22.9% |
2016年 | (共)トランプ | 19,114.37 | 0.4% |
トランプ大統領の弾劾が成立すれば局面は大転換するが、現時点で成立の見通しは薄い。結局は来年も、米中を横にらみしながら大統領選アノマリーに期待するという、「トランプ相場」が継続するだろう。
一方、日本も政情はキナ臭さを増している。政府与党は13日、先にまとめた26兆円の経済対策を実行するための補正予算案を閣議決定したが、本来なら補正も先般の臨時国会で成立させておくのが常道だ。これをあえて来年通常国会に持ち越したことで、補正成立後の1月解散説が燻り始めた。1月解散なら、安倍首相の支持基盤である保守派が反発し、米中対立下で米国に対する“裏切り”ともなりかねない、習近平・中国国家主席の国賓来日(20年春予定)をかわすこともできる。ちなみに衆院選でも下記のような株高アノマリーがある。
解散時内閣 | 解散日 | 投票日 | 解散日と投開票直前を 比較した日経平均騰落率 |
中曽根 | 1986年6月2日 | 1986年7月6日 | 5.1% |
海部 | 1990年1月24日 | 1990年2月18日 | 1.9% |
宮沢 | 1993年6月18日 | 1993年7月18日 | 2.7% |
橋本 | 1996年9月27日 | 1996年10月20日 | 0.3% |
森 | 2000年6月2日 | 2000年6月25日 | 1.0% |
小泉 | 2003年10月10日 | 2003年11月9日 | -1.5% |
小泉 | 2005年8月8日 | 2005年9月11日 | 7.8% |
麻生 | 2009年7月21日 | 2009年8月30日 | 9.1% |
野田 | 2012年11月16日 | 2012年12月16日 | 7.9% |
安倍 | 2014年11月21日 | 2014年12月14日 | 0.1% |
安倍 | 2017年9月28日 | 2017年10月22日 | 5.4% |
いずれにせよ、来年は日米とも政治イヤーになりそうだ。今回はトランプノミクス、アベノミクスに絡む銘柄群を紹介するのでご参照いただきたい。
コード | 銘柄名 | 終値 (12/17) |
注文画面 |
---|---|---|---|
5922 | 那須電機鉄工 | 16,690 | ![]() |
6489 | 前澤工業 | 391 | ![]() |
6403 | 水道機工 | 2,594 | ![]() |
5612 | 日本鋳鉄管 | 1,341 | ![]() |
3064 | MonotaRO | 2,837 | ![]() |
渡部 一実 氏
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