渡部 一実 氏
株式会社ストックボイス 記者
産経新聞記者として政治経済報道に携わる。2014年からストックボイス記者。
2019年06月25日
岡三オンライン証券株式会社
この夏はアベノミクス以降、東京金融市場を支配していた「円安・株高」トレンドが転換し、「円高・株高」あるいは「円高・株安」を模索する展開になるかもしれない。
後々振り返ってみれば、あの時の動きがそれを示唆していた、と想起され得るのが、米国連邦公開市場委員会(FOMC)通過直後、20日(木)の東京市場の動きだ。
FOMCの結果は大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を2.25~2.50%で据え置き。声明では今後の景気見通しの「不確実性(uncertainties)」に触れ、政策判断について「あらゆる経済指標を辛抱強く見守る」の「辛抱強く(patient)」を削除。米中貿易摩擦に伴う景気下振れリスクを考慮し、「もう辛抱し切れなくなった」のか、年内の利下げをも示唆する内容となった。
結果発表前に1ドル=108円30銭台だった為替は、発表後の1時間で108円10銭台まで下落。翌20日の午前9時以降は円高が急加速し、同日は107円50銭台と1月の「フラッシュ・クラッシュ」以来5か月ぶりの円高を付ける場面もあった。
米国が利下げに転じれば、低金利政策を採る日本との金利差が縮小し、現在のドルに対する円の相対的な安さ(=ドル高・円安)が巻き直される。極端な「円高」とまではいかなくても、「ドル下落・円動かず」くらいまでは“相対的な円高”に振れるだろう。これは理解し易い。
が、今回不思議なのは株価の動きだ。FOMC以降、これまで「円高」が売り材料だった日経平均はどちらかと言えば買われているのだ。20日は円高にも関わらず、前日比128.99円(0.6%)高の2万1462円86銭と1か月ぶりの高値を回復。同時に債券も買われて長期金利が低下し、円、株、債券が同時に買われる「トリプル高」となった。
「円高・株高」の背景にあるのは欧米の中央銀行の「緩和競争」だろう。
来年再選選挙を控えるトランプ大統領から、解任も含めた執拗な利下げ要請を受けるパウエルFRB議長。本来、利上げ論者とみられる彼は今回は何とか「年内の利下げ示唆」で議論を取りまとめたが、セントルイス連銀のブラード総裁が「今回会合での利下げ」を主張。パウエル体制初の“造反者”となった。今後、FRB内部でも緩和勢力は勢いを増しそうだ。
欧州でもドラギECB総裁が18日に緩和容認発言。利下げに加え、2018年末終了した量的緩和策の再発動もチラつかせた。従来は「経済が悪化すれば動く」との対症療法的スタンスだったが、今回は「現在の状況から改善しなければ動く」と予防療法に一方踏み込んだ。これを「ユーロの通貨安誘導」と非難するトランプ・ツイートにも、「我々は(2%の物価目標達成のため)何でもやる」とどこ吹く風だ。
一方、中国も欧米に連動するかもしれない。米欧が緩和に動き、自国通貨(人民元)に上昇圧力がかかれば輸出が停滞するため、中国人民銀行も追加緩和に動かざるを得ないだろう。これを先取ったのか、FOMC直後の20日、上海総合指数は前日比69.32ポイント(2.3%)高の2987.12と1か月半ぶりの高値を回復している。
米→欧→中の「緩和ドミノ」が日本に到達した時、日銀はどう動くのか。もし追加緩和に動けば、日米通商交渉を抱える米国側からの反発は必至。為替条項適用も視野に入るだろうから、大規模な量的緩和は考えづらい。せいぜい、イールド・カーブ・コントロールをいじるのが精いっぱい、となれば、ドル安・ユーロ安・円高局面となりそうだ。
とはいえ、直近の動きで分かる通り、円高だから株安とは限らない。米欧中の緩和マネーが割安感の強い日本株に流れ込む可能性は高く、足元の日経平均の強さなど、すでにこれを先取る動きも垣間見えつつある。そして牽強付会的に言えば、「円安・株高」フェーズが「円高・株高」になるのか「円高・株安」になるのか、次なるトレンドを見極めるための手控えムードが、直近の薄商いにつながっているのかもしれない。
今回は、米欧中の緩和マネーが流れ込んだ際に注目されそうな銘柄群を紹介する。世界トップクラスの技術力を持つ割には、足元の割安感が強い銘柄を選考した。ご参照いただきたい。
コード | 銘柄名 | PBR | 終値 (6/25) |
注文画面 |
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4228 | 積水化成品工業 | 0.54倍 | 755 | ![]() |
4508 | 田辺三菱製薬 | 0.75倍 | 1,212 | ![]() |
5110 | 住友ゴム工業 | 0.71倍 | 1,252 | ![]() |
5333 | 日本碍子 | 1.03倍 | 1,534 | ![]() |
6902 | デンソー | 0.96倍 | 4,457 | ![]() |
7911 | 凸版印刷 | 0.46倍 | 1,664 | ![]() |
渡部 一実 氏
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