業界図鑑 ~業界・セクターごとのトレンドを掴む~

2018年07月11日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】情報・通信業界 ~ 急成長が続く電子書籍市場

7月1日、電子書籍と紙の書籍をオンラインで販売しているハイブリッド型総合書店「honto」の運営が、トゥ・デファクト社から親会社の大日本印刷へ移された。出版業界は元々、典型的な水平分業型の業界で、出版社、印刷会社、取次会社、書店という構造が固定化されていた。特に取次会社は日本出版販売(日販)とトーハンの寡占状態で、流通網が確立されていたため、新規参入が難しかった。しかし、2015年頃から取次会社を介さずアマゾンジャパンと直接取引を始める出版社が出てきた。さらにここ数年は、電子書籍市場の拡大が異業種からの参入や業界再編を促している。

1. 紙に比べて電子書籍市場の規模は小さい

全国出版協会の統計によれば、2017年の紙の出版物の販売金額は、1兆3,701 億円(前年比-6.9%)で13年連続のマイナスだった。内訳は書籍が7,152億円(同-3.0%)、雑誌が6,548億円(同-10.8%)。それと比較すれば電子書籍の市場規模は2,215億円(同+16.0%)とまだ小さい。内訳は電子コミックが1,711億円(同+17.2%)、電子書籍が290億円(同+12.4%)、電子雑誌が214億円(同+12.0%)で、コミックの電子化が市場を牽引していることが分かる。

インプレス総合研究所は、2021年には電子書籍(ここでは電子コミックを含む)は3,120億円、電子雑誌は440億円の規模になると予想している。電子出版市場全体で3,560億円というのは、355億だった2007年度の10倍に相当する。それ以降も成長が続くことに異論は少ないだろう。

<紙の出版物と電子出版物の市場の推移(億円)>

家庭用エアコンの出荷台数と金額の推移

出所:全国出版協会の資料より作成

2. 紙から電子への移行はさらに進む

2010年にアップル社からiPadが発売された時、本格的に電子書籍の時代が来ると言われていた。それまでは主にアマゾン社のキンドルで読まれていたが、消費者としては本を読むためだけに高価なデバイスを購入することはハードルが高かった。iPadも当初は持ち運ぶには大きくて重いという意見もあった。2012年頃までは、予想に反して電子書籍市場が伸びなかったと言えるのではないだろうか。その後小型のiPad mini(日本で人気だが欧米では大きい方が好まれている)や様々なタブレットが生まれ、スマホが浸透した。電子書籍の成長率が高まったのは2013年頃からである。

また依然として電子書籍の購入をためらう理由に、すぐに開きたいページが開けない、詳細な図が入った技術書が読みづらいということがある。しかし、クロスリファレンスの追加や電子書籍用レイアウトへの変更など、電子化への工夫が進んでいる。今後はあらゆる分野の書籍において、電子化が進むのではないだろうか。

3.電子化でも好調な印刷会社

一般人が紙で自費出版すると100万円はかかる。電子であれば極端な例として、著者が直接アマゾン・キンドルにアップロードして販売することが可能である。キンドルのフォーマットがAZW形式のため、Word形式のファイルをアップロードする際に日本語のルビや特殊記号を使用しないように注意し、表紙はpng形式などで作成しなければならないが、特に高度な専門知識は必要ない。出版業界は電子化により、プロとアマチュアが混ざってフラット化している。

また電子化でマイナスの影響を受ける会社は、業界構造の真ん中にある印刷会社と取次会社である。ところが印刷会社は半導体電子部材事業が好調であり、電子書籍事業も手がけている。前述のとおり大日本印刷はプラットフォームを確立しており、同じく印刷業界2強の凸版印刷は、2006年から電子書籍の取次事業に着手し、2011年に販売事業も設立している。2013年には電子書籍取次会社のメディアドゥホールディングスが上場した。凸版印刷の子会社だった流通大手のビットウェイ社を買収し、現在は販売も行っている。このように、出版業界においては水平分業型から垂直統合型への移行がさらに続くだろう。

<印刷会社2社の業績推移>

凸版印刷

凸版印刷

大日本印刷

大日本印刷

注:19/3期以降はコンセンサス

出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ

4. 電子書籍関連銘柄

コード 銘柄名 市場 概要 終値
(7/11)
注文画面
3159 丸善CHIホールディングス 東証1部 出版(丸善出版、岩崎書店)、書店(丸善ジュンク堂、丸善雄松堂)、図書館支援(TRC)が柱。大日本印刷(7912)の子会社。 391
3641 パピレス 東証JASDAQスタンダード 1995年から電子書籍を販売している先駆者。富士通の社外ベンチャーとして出発。電子貸本「Renta!」も運営。 1,952
4348 インフォコム 東証JASDAQスタンダード システム開発と電子コミックが柱。「めちゃコミック」運営。繊維大手・帝人(3401)の子会社。 2,890
7911 凸版印刷 東証1部 印刷業界2強。液晶や半導体部材を生産。紙と電子の出版物の架け橋となるハイブリッドソリューションサービスを提供。電子書籍配信のBookLiveに出資。 820
7912 大日本印刷 東証1部 印刷業界2強。液晶や半導体部材を生産。ハイブリッド総合書店「honto」を運営。電子取次・配信のモバイルブック・ジェーピーに出資。 2,344

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。2014年7月、経済アナリストとして独立。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

社会人になって最初に配属された外国証券室で、Excelプログラミングの勉強を始める。次第に社内でシステム開発やデータベース構築を担当するようになる。その後、アナリスト、エコノミストへとキャリアを変えていくが、ITスキルを活用することで業務を効率化し、分析のための時間を生み出すことで仕事のスピードとクオリティを高めている。また、社内でワークショップを開催し、相手のつまずきやすい点を把握。わかりやすい教え方に好評を得ている。

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