- 池田
- 「サブプライムローン問題」で一時低迷した世界の株式相場を尻目に、中国株相場はハンセン指数が3万ポイントを突破するなど好調が続いています。好調の原因はどこにあると思いますか?
- 門倉
- 基本的に中国経済は成長率が年11%を超える好調な状況が続いており、良好なファンダメンタルズを反映して世界中の投資マネーが中国に流入しているのが大きな理由のひとつでしょうね。
サブプライムローン問題によって先進国市場のリスクが大きくなっているので、先進国から中国に流れるマネーが増えているのではないかと思います。先進国の景気が新興国頼みになっていて、その中心が中国であることも投資マネーに好感されているのではないでしょうか。
社長対談
第三回 門倉貴史氏

今回のゲストは、新興国経済の専門家として知られるBRICs経済研究所の門倉貴史氏。8月に起きた米国のサブプライムローン問題を発端とする世界同時株安、いわゆる「サブプライムショック」は、米国や日本など世界の主要株式市場の相場を奈落の底に突き落としたが、まるでそのショックに逆らうかのように中国株相場は急上昇を持続した。その理由は何だったのか、また中国株相場は今後も好調を持続するのかを聞いた。
「サブプライムショック」どこ吹く風 中国株“ひとり勝ち”の理由とは?」

- 池田
- 中国国内の株式投資熱も相変わらずホットですね。「サブプライムショック」当時、8月10日前後から全世界的に株価が急落したわけですが、当社グループの上海駐在員事務所の話では、中国の個人投資家たちはむしろ買いに向かっていたそうです。
下がるリスクをほとんど考慮せず、誰も彼もが株にのめり込んでいる状況です。月収3000元(約5万円)のタクシー運転手が30万元(約500万円)のお金を動かしていると言うんですね。
そういうのが恒常化していて、彼らは貧しいのだけれども、自分の生活を向上させる手段として株式投資を位置付けている。上海の街中では、株式投資を扱った新聞が20紙ぐらいも売られているそうです。 - 池田
- 来年は北京五輪も開催されるわけですが、海外から中国への投資マネーの流入は今後も続くとご覧になりますか?
- 門倉
- 株価が割安かどうかという点で考えると、むしろ現在の中国株相場は割高です。個別で見ると業績に見合って上昇している銘柄もありますが、割安感だけで買われている銘柄もかなり目立ち、上海や深センなどの本土市場はややオーバーバリュー気味になっているように感じます。

- 池田
- いずれ調整局面が訪れるということでしょうか?
- 門倉
- 中長期的な上昇トレンドが崩れることはないと思いますが、どこかで調整が入らないと持続的には上がらないでしょうね。
何が調整のきっかけとなるかはわかりませんが、今後、中国人民銀行(中央銀行)が金利をもう少し急ピッチで上げるとか、先送りされてきたキャピタルゲイン課税の導入、あるいは人民元の大幅な上昇を容認するといったことがあった場合には、中国株相場は大きな調整を迎えるかもしれません。 - 池田
- ただ、中国当局はこれまでも、金利や預金準備率の引き上げなどを何度も行って相場を冷却させようとしてきましたが、それでも株価は急激に上がり続けています。
- 門倉
- これまでの引き締めは、中国本土の投資家にとってさほど大きなサプライズではありませんでしたからね。
北京五輪までは、大胆な引き締めは難しいということだと思うんですが。今後、投資家の予想を裏切る大きなサプライズがあった場合には、大幅に調整することになるのではないでしょうか。
基本は中長期、急落局面は絶好の「買い場」
- 池田
- ひと口に「中国株」と言っても、本土上場のA株、B株と香港上場のH株、レッドチップとでは相場の見通しが微妙に違ってきます。
とはいえ、中国本土の投資家も制度上、香港株を買えるようになりましたから、今後は香港市場と本土市場の相関性も高まるのではないかと思うのですが、門倉さんはどのようにご覧になりますか? - 門倉
- かつても中国本土の投資家が半ば違法的に香港株を買うことはあったのですが、現在はQDII(適格国内機関投資家)制度の実施によってかなり制限が緩和されたので、本土のお金が香港市場に入ってくる流れはこれから強まるのではないかと見ています。
おそらくQDIIの投資認可枠がさらに拡大され、中国本土から香港に流入するお金が増えるので、それによって香港株相場がさらに上がるということは十分に考えられます。
中国本土と香港の市場を比べると、企業会計などの部分で香港市場のほうがしっかりしているところがありますので、香港市場にお金が流れる形ができやすいのではないでしょうか。 - また、香港市場の相場のほうが本土に比べるとやや出遅れ感もありますし、その意味でも、今後は香港市場のほうが本土市場よりも上がりやすいかもしれません。

- 池田
- 世界的に見てもいまの中国株のPERは割高水準にあります。「どこかで調整してほしい」と思う人は海外の投資家を中心に多いはずです。そのような思惑によって相場が急落した局面にどう対処するかが中国株に投資するうえでのポイントでしょうね。
基本は、急落局面をうまく拾って買いを入れることだと思うんです。中長期的に見た場合にアジア、中国が有望な市場であることは間違いないですし、有望な市場を中心に投資することが望ましいわけですから。調整局面をチャンスと捉え、キャッシュポジションを高めて備えておくのがいいのではないでしょうか。妥当な株価水準に落ち着いたところで、いかに速やかに買いを入れるかが大事ですね。
- 門倉
- 同感です。株価が割高な今の段階で短期投資するのは望ましくないと思いますので、3~5年の中長期スタンスで臨むのがいいのではないでしょうか。なるべく下がったときに買ったほうがいいですね。
また、本土上場のA株、B株は、香港上場のH株、レッドチップに比べるとより価格変動リスクが大きいですから、後者のほうが安定感、安心感はありそうです。 - ちなみに、香港上場株の取引通貨である香港ドルの相場は現在、米ドルとペッグ(連動)していますが、その結果、人民元に比べてどんどん割安になっています。
同じ国の通貨価値がどんどん開くのは不自然ですから、いずれはペッグが外れて人民元の水準に切り上げられるか、人民元相場に収れんされる形で香港ドルの価値が上がるのではないでしょうか。
その意味でも、香港市場というのは海外から投資する場合には魅力があるのではないか思いますね。
新興国の中でも魅力の大きい中国
- 池田
- マクロ視点で今後の中国経済の見通しをお聞きしたいのですが、今後も高度成長は持続するでしょうか?
- 門倉
- 2010年までは北京五輪、上海万博と大きなイベントがありますので、その効果によって10%前後の高い経済成長は十分可能だと思います。
ただ、その間に例えば人民元を完全変動相場制に移行してしまうといった大きな制度の変更があった場合には、多少成長がスローダウンするかもしれません。 - 問題は2010年以降の話ですが、一人っ子政策の影響で中国の人口はこれからそれほど伸びなくなり、しかも高齢化が進むことになりますので、社会保障の問題も出てくるでしょうし、若年労働力の供給という点でも中長期で考えると成長余力は小さくなるのではないかとみています。
インフレを加速させない範囲でどれくらい成長できるかが大きなポイントとなるでしょうね。2010年以降の潜在成長率は7%台に落ちるのではないでしょうか。それでもかなり高い成長率ですから、それほど大きな成長の屈折があるわけではありませんが。

- 池田
- 片や日本の成長は3%行くか行かないかという状況です。一時は2020年にならないと日本と中国の経済力(GDP規模)は逆転しないと言われていましたが、最近では2013年には追い越されてしまうというような話も出ています。そうなると当然、中国を見直す気運というのはいろいろなところで出てくるだろうと思うんです。
- BRICs経済の目玉となるのは中国であることは間違いないはずです。インドなどはインフラ整備が滞っている。これは、社会資本をどう考えるかという国の姿勢の違いの表れだと思うのですが。そういう比較からすると、中国にお金が流れる構図は大きく変わることはないだろうと思います。
- 門倉
- そうですね。新興国というのは全般にインフラの整備が遅れているという特徴があるのですが、その中では中国のインフラ整備がいちばん進んでいますし、外資を導入するようになったもの1978年の「改革・開放」からと新興国の中ではいちばん歴史がありますからね。
- 一方で、最終消費地としての中国の市場規模も非常に大きくなってきています。人口13億人のうち沿海部だけで5000万人程度の中産階級がいるといわれていますから。
いまは米国が世界の消費の中心ですが、人民元が正しく評価されるようになれば、中国の消費市場が世界最大規模になるでしょう。そうすると先進国やほかの新興国も、すべて中国が基軸になってくるのではないかと思います。 - ブラジルやロシアなどは、完全に中国の資源需要(鉄鉱石、エネルギー、穀物、コーヒー)に頼って成長している側面がありますからね。中国と比肩しうる新興国となるとインドだと思うのですが、いずれも13億人、11億人の人口を抱えており、最終消費地として独立的に2つの国が成長していくことになるのではないかと見ています。
金融はかなり割高、消費・内需関連に出遅れ感
- 池田
- 門倉さんが中国株で注目しておられるセクターは?
- 門倉
- 「世界の工場」から「最終消費地」への転換期を迎えていますので、消費関連、内需関連が長い目で見た場合には注目のセクターだと思います。
また、インフラ整備がかなり進んでいるとはいえ、まだまだ内陸部では整備が遅れている部分もありますので、鉄道、建設などのインフラ関連も注目していいのかなと思います。 - 一方で中国工商銀行などの金融セクターはかなり時価総額が膨らんできています。これから金融引き締めが行われるようになれば、株価はかなりショックは受けるでしょうね。
ただ、消費関連といっても自動車や家電などは価格競争が厳しいので、あまり株価の上昇は期待できないかもしれません。

- 池田
- 中国では昨年、自動車が728万台が売れたということですが、2010年には生産台数が1800万台になるといわれていますね。とてもじゃないがさばき切れるとは思えない。供給過多の見通しがある業種というのは価格競争が心配されますね。
- ただ、どんなに人件費が高騰したとはいえ、中国には「世界の工場」として価格破壊で勝ち抜く強みがまだ残っていると思います。
最近、アメリカでは42型で 11万円と高性能かつ低価格の中国製テレビが売れに売れ、サムスン電子を凌駕しているといいます。同じ技術のものをベトナムやインドで作れるかといえば、そう簡単ではありません。そこまで中国の生産技術は上がってきているということですね。
- 門倉
- 自動車でも奇瑞汽車などは全部自社開発でオリジナルのクルマを生産して業績も伸びていますからね。
中国政府も国内優良企業の海外進出を積極的に支援していますし、世界市場で通用する中国企業が少しずつ増えているのかなと思います。 - 池田
- 個別の銘柄で注目されているものはありますか?
- 門倉
- いずれ上場するといわれている奇瑞汽車や百度などですかね。
- 池田
- 最後に、新興国の研究をご専門とする門倉さんに、中国以外で注目されている新興国を教えていただきたいのですが。
- 門倉
- 世界的に環境への配慮から原子力発電所の建設が進んでいるので、世界最大のウラン埋蔵量を誇るカザフスタンが有望ですね。ドルへの信認が弱まり、金相場が上がってくるので産金国である南アフリカも伸びるのではないかと思います。
BRICs周辺国も注目したいですね。例えばベトナムは、隣接する中国の経済発展の恩恵を受けて成長していますし、インドの周辺ではパキスタンやバングラデシュ、ロシア周辺では東欧のポーランド、チェコ、ハンガリー、ブラジル周辺はアルゼンチンやベネズエラでしょうか。 - 池田
- 本日はありがとうございました。
免責事項
- 本コンテンツの内容は、岡三オンライン証券としての見解を提供するものではなく、あくまでも対談者個人の考えを表明したものです。また、その正確性、完全性および適時性について何ら保証するものではなく、個別銘柄の売買を勧誘又は推奨するものでもありません。
- これらの情報によって生じたいかなる損害についても、岡三オンライン証券が一切責任を負うものではありません。
- 投資に関する最終決定は、契約締結前交付書面等およびWebサイト上の説明事項等をよくお読みいただき、取引の仕組・リスク・手数料等諸費用をご理解のうえ、ご自身の判断と責任で行ってください。





















