バフェット・アプローチで有望株を探す

04/11(木)09:50

岡三証券 投資戦略部
日本株式戦略グループ 内山 大輔
POINT
  • ウォーレン・バフェット氏による日本株投資が再注目される公算
  • バフェット銘柄は長期利益成長が期待できる割安銘柄などに潜む可能性
  • 双日(2768)、マクニカHD(3132)、日本製鉄(5401)などに注目

次なるバフェット銘柄への注目が高まる可能性

一部報道によれば、米著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャーハザウェイ(以下、バークシャー)が円建て社債を発行する見通し。(図表1)のとおり、2019年9月を皮切りに、過去、バークシャーによる円債発行は日本株投資(5大商社)への布石となってきた。円債発行の条件や規模といった詳細な情報を待つ必要はあるが、2024年5月4日(現地)にはバークシャーの年次株主総会も控えており、「バフェット銘柄」への注目度が増す可能性があろう。回復基調にある日本のバリュー株のモメンタムが一段と勢いづく可能性もありそうだ(図表2)。

(図表1)円債発行は日本株投資への布石となってきた
バークシャーの円債発行と5大商社株への投資

出所:各種資料作成:岡三証券 ※2024年4月10日現在
  • 大量保有報告書はバークシャーハザウェイの完全子会社、ナショナル・インデムニティー・カンパニー
  • 24年2月に公表した年次書簡で5大商社株の保有比率が約9%になったと報告している
(図表2)バリュー株のモメンタムは復活中
TOPIXバリュー指数vs グロース指数の推移

出所:QUICK作成:岡三証券 ※2024年4月9日現在

バフェット銘柄は稼ぐ力が高いがバリュエーションが低位の銘柄に潜む

バフェット氏はバリュー投資家の一人として知られる。実際、バークシャーの投資が明らかになる直前の2020年7月末時点の5大商社株は、概ね①時価総額1兆円超え、②PBR1倍割れ、③予想配当利回り3%以上だった(図表3)。ただし、23年春に訪日した際のインタビューでは、「商社株は益回り(PERの逆数)が14%程度だった一方で、配当成長率は70%超えという状況に困惑したことが投資する契機となった」と述べている(図表5、6)。株式バリュエーションが相対的に低い一方で、長期的な利益成長が期待できる銘柄がターゲットになる可能性があろう。

図表7では、実績益回りが高く、過去の配当増加率や配当原資たる純利益の伸びが大きく、時価総額に占めるFCF比率も高い銘柄を抽出した。次なる商社投資のシナリオでは双日(2768)やマクニカHD(3132)、その他では再編期待が高い鉄鋼業界から日本製鉄(5401)などに注目したい。

(図表3)バフェット氏はバリュー投資のスタイル
2020年7月末 5大商社の投資指標データ

出所:QUICK作成:岡三証券
  • 2020年7月末時点、過去5年株価騰落率は2015年8月末~20年7月末
  • 三井物産(8031)はファイナンス銘柄、2024年4月10日現在
(図表4)5大商社株は堅調に推移
5大商社株の株価推移

出所:QUICK作成:岡三証券 ※月次、2024年4月9日現在
(図表5)バフェット氏は益回りや配当成長率を重視か 
2023年4月に訪日した際のバフェット氏の主な発言
  • 実質的には14%程度の益回りで、配当金も70%増えたという事実に私は困惑した
  • 大企業だと思った。何をやっている会社なのか大体理解できた。特に当時の金利と比較すると、その価格は不合理なものだった
  • 5大商社への投資は10年、20年と続けていくつもり
出所:各種資料作成:岡三証券
(図表6)商社株には高い益回り、高い配当増加率と純利益増加率、高いFCF/時価総額比率などの特徴があった
2020年7月末 5大商社の各種データ

出所:QUICK作成:岡三証券
  • 丸紅(8002)の2020/3期は最終赤字。2020年7月末の実績益回りが算出不可のためNAとした
  • 三井物産(8031)はファイナンス銘柄、2024年4月10日現在
(図表7)バフェット銘柄として期待したい長期有望銘柄の候補
予想配当利回りが2%以上、実績益回りが8%以上、中期的な配当総額増加率と純利益増加率が50%以上、FCF/時価総額(中央値)が5%以上の銘柄
右にスクロールします→
コード 銘柄 概要 時価総額(億円) PBR(倍) 予想配当利回り 実績益回り* 直近5年配当総額増加率 直近5年純利益増加率 直近5年FCF/時価総額**中央値
1605 INPEX 石油・天然ガス開発専業。豪州でLNG案件(イクシス)を操業 31,069 0.73 3.08% 10.1% 171% 235% 12.8%
2768 双日 自動車、航空、肥料に強みを持つ総合商社の一角 9,023 0.97 3.36% 12.0% 119% 96% 11.1%
3132 マクニカホールディングス 独立系エレクトロニクス専門商社。半導体の輸出入と販売を手掛ける子会社を保有 4,384 1.86 2.63% 9.2% 187% 260% 16.6%
3861 王子ホールディングス 国内トップの製紙メーカー。海外でも事業展開 6,577 0.61 2.46% 8.8% 60% 56% 8.3%
5401 日本製鉄 国内首位、世界トップクラスの鉄鋼メーカー 34,497 0.71 4.40% 20.8% 168% 284% 9.9%
5444 大和工業 タイ、米国、中東にも国際展開する電炉メーカー 5,438 1.02 3.58% 12.3% 473% 434% 5.6%
8002 丸紅 比較的バランスのとれた事業ポートフォリオを持つ総合商社 45,042 1.42 3.08% 11.8% 147% 157% 17.5%
8031 三井物産 三井グループの大手総合商社。資源の上流権益に強み 113,731 1.58 2.26% 9.6% 77% 170% 11.4%
8053 住友商事 住友グループの総合商社。バランスの良い収益構造が特徴 46,746 1.09 3.27% 11.8% 85% 83% 9.2%
9101 日本郵船 世界でも有数の大規模かつ多様な船隊を持つ海運業界大手 20,845 0.74 3.18% 48.8% 5122% 4921% 22.2%
出所:QUICK作成:岡三証券 ※データは2024年4月9日時点 三井物産(8031)はファイナンス銘柄、2024年4月10日現在
  • スクリーニング条件は①TOPIX1000採用銘柄で時価総額3,000億円以上、②予想配当利回りが2%以上、③実績益回りが8%以上、④直近5年の配当総額増加率が50%以上、⑤直近5年の純利益増加率が50%以上、⑥直近5年のFCF(フリーキャッシュフロー/時価総額)の中央値が5%以上をすべて満たす企業
  • *益回り:年間の1株利益が株価の何%を稼ぐかを示す指標。株価の割安度を表す指標の一つで、PER(株価収益率)の逆数
  • **FCF/時価総額:FCFは営業活動によって生み出された資金から、設備投資や企業買収など、事業活動の将来を担うために使われた資金を差し引いて求められる「会社が自由に使えるお金」を指す。1年間で生み出されたFCFを期末の時価総額で除算することで、1年間でどの程度自由なお金を生み出せたかを図る。図表では5期の中央値をとった。

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    お申込時に直接ご負担いただく費用:お申込手数料(お申込金額に対して最大3.85%(税込み))保有期間中に間接的にご負担いただく費用:信託報酬(信託財産の純資産総額に対して最大年率2.254%(税込み))
    換金時に直接ご負担いただく費用:信託財産留保金(換金時に適用される基準価額に対して最大0.5%)その他の費用:監査報酬、有価証券等の売買にかかる手数料、資産を外国で保管する場合の費用等が必要となり、商品ごとに費用は異なります。お客様にご負担いただく費用の総額は、投資信託を保有される期間等に応じて異なりますので、記載することができません(外国投資信託の場合も同様です)。
  • 投資信託は、国内外の株式や債券等の金融商品に投資する商品ですので、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の変動による、対象組入れ有価証券の価格の変動によって基準価額が下落することにより、損失が生じるおそれがあります。
  • 投資信託は、組入れた有価証券の発行者(或いは、受益証券に対する保証が付いている場合はその保証会社)の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等による、対象組入れ有価証券の価格の変動によって基準価額が変動することにより、損失が生じるおそれがあります。
  • 上記記載の手数料等の費用の最大値は、今後変更される場合があります。
<信用取引>

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  • 自然災害等不測の事態により金融商品取引市場が取引を行えない場合は売買執行が行えないことがあります。
  • 2037年12月までの間、復興特別所得税として、源泉徴収に係る所得税額に対して2.1%の付加税が課税されます。

岡三証券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第53号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本暗号資産取引業協会

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(2023年1月1日改定)

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