次の一手 ~市場の話題とテーマ~

2019年10月08日
岡三オンライン証券株式会社

【次の一手】経済と株価の“矛盾” FOMC、増税反動をどう読む?

米国株式市場が鮮烈な展開をみせている。結語すれば、相次ぐ経済指標の悪化が利下げ期待につながり、株式市場を支えている、ということだ。指標の読み方はマーケットお得意の“いいとこ取り”、いわゆる「我田引水」のオンパレード。実体経済の悪化が金融政策期待を生み、株が買われるという、経済と株価の“矛盾”は今のところ適温相場を演出してはいる。が、矛盾は所詮矛盾だから、何かの拍子に誤魔化しようのない景気後退の事実を突き付けられたり、パウエルFRBの手腕の限界が露呈すれば、マーケットは一気に調整色を強める可能性もある。
これは、消費増税の反動減をポイント還元などで乗り切ろうとしている現状の日本も同じ。増税は本来、消費手控えや景気後退につながるはずだが、その影響を最も受けるはずの小売株が足元で強い。この “矛盾”もいつかは解消されるだろうから、そのタイミングに用心が必要だ。

1日発表の9月ISM製造業指数は市場予想(50.1)を大きく下回る47.8で2009年6月以来10年ぶりの低水準。翌2日発表のADP雇用統計も予想(14.0万人増)を下回る13.5万人、3日発表のISM非製造業指数も予想(55.0)を下回り52.6だった。
指標は確かに悪い。が、不思議なのは株価の動きだ。ISM製造業指数が発表された1日は343ドル(1.3%)安、ADP雇用統計の2日は494ドル(1.9%)安と“まっとうな”下げ。ただ、ISM非製造業指数の3日は300ドル安まで売られたものの、3日間の合計下げ幅が1000ドルに達したあたりから、急転してプラス浮上。結局122ドル(0.5%)高に切り返したのだ。
経済指標の悪化が10月FOMCでの利下げ期待に化け、株買いにつながったのだろう。FED-WATCHでは10月の0.25ポイント利下げ確率が3日に93%と、前日の77%から急上昇していた。

【NYダウ:日足:6カ月】

そして、先週の「経済指標ウィーク」の大トリたる4日の雇用統計は、対前月の非農業部門雇用者増加数が市場予想(14.5万人増)よりやや弱い13.6万人増。平均時給も前年同月比2.9%増と予想(3.2%)増より鈍化し、ここ1年で最も低い伸びだった。一方、失業率は予想(3.7%)より低い3.5%で50年ぶりの低水準。しかも、労働参加率(生産年齢人口に占める働く意志を表明している人の割合)は63.2%で前月(63.0%)とほとんど変わらなかったから、失業率低下は求職活動者の増加に伴うものではなく、本来あるべき雇用改善を示唆している。つまり、強気・弱気の両方から都合の良い解釈が可能で、結局この日のダウは372ドル(1.4%)高と買われた。

日経平均株価も3日に大きく窓を開けて売られた後、75日移動平均線を下値サポートに下げ止まり。2万1300~1500円処で頑強さ、あるいは膠着感をみせている。ここまでアメリカ株の鮮明なアップダウンをみせられると、売り方・買い方とも足がすくみ、早くもFOMC待ちムードなのか。週明け7日の東証1部は上昇銘柄数1015に対し、下落も1015と完全に膠着状態だった。

【日経:日足:6カ月】

日本の経済動向も読みづらい。内閣府が7日発表した8月景気動向指数(2015年=100)は前月比0.4ポイント低下の99.3で、基調判断は4カ月ぶりの「悪化」。10月の消費増税を前にした国内景気の停滞感、が背景という。一方、若干時期はずれるが、8月の月例経済報告の基調判断は「緩やかに回復」。9月の判断が注目されるところだが、増税前の駆け込み需要と反動減、政府のテコ入れ策の影響がどう出るか。最も影響があるのは小売株だろう。

ただ、足元の小売株は元気いっぱい。キャッシュレス還元や各店の価格据え置きサービスなどが奏功しているのか、今のところ大きな悪影響は聞こえてこない。このまま増税影響を乗り切れれば、もともと米中やFRBなどの外部要因に振り回されづらいだけに、投資資金の格好の流入先になる可能性もある。一方、本来の増税悪影響を今は政策で強引に支えている、「カンフル剤が切れれば悪影響が顕在化する」との立場に立てば、今が天井、とみる売り方もいるだろう。

【吉野家:日足:6カ月】

今回は足元で動意付いている小売株、自動車・住宅減税関連株を紹介するので、ご参照いただければ幸いである。

コード 銘柄名 終値
(10/8)
注文画面
1928積水ハウス2,170.5
3030ハブ1,316
3382セブン&アイ・ホールディングス4,076
7564ワークマン8,390
9861吉野家ホールディングス2,775
9887松屋フーズホールディングス4,075

執筆者

渡部 一実 氏
株式会社ストックボイス 記者

産経新聞記者として政治経済報道に携わる。2014年からストックボイス記者。

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