9.天底のパターン

9.天底のパターン

値ごろ感だけに頼って、「底値で、買ったつもりでいたら一段安になった」「戻り天井だと思って売ったら本格的な上昇相場に入ってしまった」といった失敗はよくある。最安値で買い、最高値で売るのは至難の業である。だが、底値圏で買い、天井圏で売りたいというのは万人に共通する願望である。天底の典型パターンとされる形(転換点もちあい)に注目する人は多い。

三尊型

典型的な天井の形として注目されるのが図9-1の三尊型天井である。仏像が三体並んでいるような形をしているのでこの名がある。この形を欧米では、人の頭と両肩に見立ててヘッド・アンド・ショルダーズ・トップと呼んでいる。

まずAからBまでの下げの段階では、天井を打ったのか、中段もちあいに過ぎないのか、判別が難しい。しかしその後の新高値CからDに至るきつい下げが問題となる。攻勢を続けていた買い方勢力の衰えに対し、売り勢力の台頭がうかがえるからだ。そして、その直後の反発が弱く、最高値のCどころかAの水準までの戻りがやっとの場合は、もはや買いから売りへ転換すべき時期にきていることが明らかである。

売買のポイントは、BとDとを結んだ線(ネックライン)を下回ったとき。天井を確認した後で売る方法になる。なお、ネックラインを割った場合の下値の目標は、最高値とネックラインの幅、つまりCとDの幅と同程度、もしくはCとDの幅の2倍程度の下げが見込まれる。利食いのめどとも言える。

逆三尊型

安値圏で三尊型と逆の形が形成された場合(図9-2)を逆三尊型ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム)と呼び、底入れ完了を暗示する。

売買ポイントは、eからの上げが最安値cの前後にある高値bとdを結んだネックラインを上抜いた時点。その理屈は三尊型と全く逆で、dからeまでの押しが浅く、その後、相当の出来高を伴う上げがあれば、もはや「下値に用なし」の相場つきを表すからである。

ネックラインを抜いたときの上げ幅の目標値としては、少なくとも最安値とネックラインとの値幅と同程度は見込める。次の目標としてはその2倍の水準が考えられる。

二重天井

天井圏の形として三尊型よりも多く見かけるのが、図9-3の二重天井(もしくは二点天井)であり、ダブル・トップとも呼ぶ。

三尊型との違いは、高値AからBまで押した後に反発し、Aに迫るものの、これを突破できずに二番天井Cをつける点である。これは押した後の上げ方の勢いの違いを表していて、三尊型を形成するほどの力もない。

その場合、天井だと見切りをつけ、売るタイミングは、2つの高値にはさまれたBの水準を下回ったときである。この水準は心理的な下支え線で、三尊型のネックラインと同じ意味を持っているため、これを割ると買いのよりどころがなくなる。

ネックライン割れ後の下げ幅のめどは、三尊型の場合と同様で、AからBまでの幅と同程度下げた水準となる。

二重底

三尊型天井に対して逆三尊型の底があるように、二重天井に対しても図9-4の二重底ダブル・ボトム)という対照的なパターンがある。

かなりの下げを演じた後でさらに下値をうかがいながら、同じ水準で2度もはね返されるようならば安値待ちの買い物が控えていることが裏付けられる。そして値位置をしだいに回復し、出来高の増加を伴いながら戻り高値bの水準を突破するようなら、買い意欲が盛り上がってきたことを意味する。

ここは底入れ後の反騰開始局面と見て買い注文を出すべきタイミングと言える。

円形天井と円形底

天井や大底は、前述の4つのパターンのように鋭角的に形成されるとは限らない。じり高の後、反転してじり安の下落をたどるケースや、逆に安値から徐々に値を回復することもある。これらは円型で鍋のような形をしていることから、天井の場合はラウンド・トップまたはソーサー・トップ、大底はラウンド・ボトムもしくはソーサ一・ボトムと呼ばれる。

円形底は中・長期の下落基調から底練りを経て立ち直る過程でしばしば見かけられる。特に「ファンダメンタルズは弱いはずなのに、下げない」と感じたときに、こうした形で底入れとなるものである。一般の人が目もくれず、売買高(出来高)も細っているようなときこそ買いのチャンスがあるものだ。

V字型の底、逆V字型の天井

これまでのパターンは、もちあいを経て天底を形成するものであったが、急落後、突如として急反騰が起こったり、急騰後の天井から戻りを見せずに急落することもある。これらを日足チャートで見ると、それぞれアルファベットのVの字に似た形となる。

V字型の底や逆V字型の天井は、いずれもファンダメンタルズや市場内部要因などの急変化に端を発する波乱であり、予兆パターンを伴わずに起こるため、対応がどうしても遅れがちになる。

手遅れにならないためには、逆指値の幅を常に設定しておく必要がある。また、ローソク足の足型に注意を怠らないようにすることも大切である。すでに述べたことだが、高値圏で長い上ひげのトンカチ十字線もしくは、前日の陽線を大陰線が包む抱き線などの形には気をつけたい。安値圏では、下ひげの長いたぐり線や陰線を大陽線が包む抱き線に注意したい(図9-6)。

また後で述べるオシレーター系の指数(RSIなど)を用いて「買われ過ぎ感」や「売られ過ぎ感」にも注意を払っておきたい。

図9-7 ドル/円週足

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