14.パラボリック

14.パラボリック

RSIの考案者として有名なW.ワイルダーが手がけたトレンド追随型の売買手法である。トレンドが反転したと判断した場合には単純に手仕舞うのではなく、途転し、これを繰り返すという方法をとる。大きなトレンドが出ているとき、有用な手法だ。

パラボリックとは「放物線状の」という意味。売買ポイントを示すSARストップ・アンド・リバース)と呼ばれる折れ線グラフの書く形からその名がある。

途転のポイントは、相場の値動きとSARが交差した地点であり、ひと目で分かる。

SARの数値は、以前の高値・安値と、当日の高値・安値を用いて計算する。その計算式から見ることにする

表16-1がその数式だが、計算の初日について少し補足する。最初に、初日のSARを決めるために、これから上げ相場となるのか、下げ相場となるのかを仮定する必要がある。上げ相場だと仮定した場合には、当日のSARとしては一定期間内(過去l~2週間程度)の安値を用い、下げ相場とした場合には逆に高値を用いる。

なお、この仮定は間違えてもよい。いずれSARが、本当の方向を教えてくれるからだ。

EP極大値)については、上げ相場なら一定期間内の高値、下げ相場なら安値を用いる。AF加速因数)には初期値として0.02を用いる。その後はEPが更新される(高値、安値を更新する)たびに、0.02ずつ加算していく。ただし、AFは最大でも0.2までと限定する。

図16-1 豪ドル/円日足

図16-1は2020年5月1日からの豪ドル/円日足と、1日以降の高値と安値をもとに、SARを計算した結果を示したものである。これは、計算開始の段階では、相場は下げ基調だとみた場合の図である。売買サインは、上昇しているSARが日足と接触したら売りサイン、下降しているSARが日足を接触した地点が買いサインとなる。

チャートを追っていくと、5月11日に買いポジションが立ち、6月11日に途転売りとなっている。5月11日からの買いポジションは利確となったが、6月11日からの売りポジションは、途転買いに転じた7月6日では、ほぼ利益が出ていない。7月6日からの買いポジションは、7月30日には損切で途転売り、その後8月12日に損切も途転買いとなった。ただ、この買いポジションも大きな利益を生み出せなかったものの、11月上旬から12月半ばまでの上昇場面では、大きな利益を生み出している。

実戦で留意したい点

チャートを見て分かるように、パラボリックの欠点は、もちあい圏内の動きに弱いという面である。大した利益も出ていないのに途転サインが出て、その直後にまた途転ということもありうるからである。ボックス相場が続けば、往復ビンタを食らうことになりやすい。

こうしてみると、新値足に似ているとも言えるが、新値足が基本的には終値を用いるのに対し、こちらは日々の高値、安値を重視している。過去の高値、安値が抵抗線や支持線になることを考えると、大切なポイントである。

また、実際に売買するにあたっては、当初は、売り、買い、いずれかのポジションをとったと仮定して計算を続け、途転のサインが出た段階で実際に建玉することをお勧めする。

また、変数であるAFの値について、ここでは0.002ずつ加算する方法を述べたが、これは為替相場において一般的に妥当とされる数値である。株式の場合は、銘柄によって値動きの性質が大きく異なるので、ひとまとめにはできないが、0.02がよいとの指摘もある。

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