業界図鑑 ~業界・セクターごとのトレンドを掴む~

2018年04月11日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】情報・通信業 ~ メガヒットがなくても好調な映画業界

映画の興行収入、配給で国内首位の東宝は、前期に引き続き1株当たり20円の特別配当を実施すると発表。当期(2018年2月期)も年間配当金45円を維持する。当期の自社幹事作品には、前期の『君の名は。』(2016年興行収入250.3億円)や『シン・ゴジラ』(同82.5億円)のようなメガヒット作品はない。それでも業績が好調なのは何故だろうか?

1. 2017年の興行収入は歴代2位

2017年の国内映画興行収入は、2,285億円(前年比-2.9%)。これは歴代1位の2016年に次ぐ水準で、4年連続で2,000億円超えとなった。2016年のメガヒット作品の反動で、邦画は前年比-15.6%となったが、洋画が+18.6%と好調だった。構成比は邦画54.9%、洋画45.1%で、入場人員は1億7,448万人(前年比-3.2%)。

興行収入第1位は『美女と野獣』(配給会社:ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー)の124.0億円。洋画上位10本がいずれも40億円を超えるという珍しい年だった。一方、邦画のトップは『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』(東宝)の68.9億円。邦画上位10本のうち6本がアニメで、このうち5本は東宝が配給会社だった。同社の興行収入の39%をアニメが占めている。

<興行収入の推移 (2000年~2017年)>

興行収入の推移 (2000年~2017年)

出所:日本映画製作者連盟のデータより作成

2. マルチウィンドウ戦略の変遷

興行収入は入場料の総額であり、その約半分が興行会社(映画館)の取り分となる。残りの半分が配給会社と制作会社に分配される。作品がヒットするかどうかは読めないため、制作会社のリスクは大きい。したがって、民間テレビ局、商社、広告会社が集まって出資する映画製作委員会方式が一般的になっている。

制作会社は興行だけで費用を回収することが難しく、二次利用で収入を確保している。1年後にビデオソフト化、さらに半年後にテレビ放送というように、マルチウィンドウ戦略によって収益の最大化を目指す。これまではビデオソフト化が主な収益源だった。しかし日本映像ソフト協会の統計によれば、販売用ソフト(DVD ビデオとブルーレイの合計)の売上金額は1,423億円(前年比-7%)、レンタル店用の売上金額は 426億円(同-13.4%)と低迷している。背景にはVODなどの動画配信の台頭がある。制作会社は、いわゆる世界観マーケティングによるゲーム、書籍、グッズ販売からの収入や、海外での版権収入を得ることに注力している。

3. 強固な収益構造

東宝の2017年2月期の営業収入(売上高に相当)の内訳を見ると、映画事業66%、演劇事業7%、不動産事業26%である。営業利益の内訳は、それぞれ63%、6%、31%であり、不動産事業が業績を下支えしている。

同社の映画事業には制作、配給、興行が含まれている。利益率は映画営業(製作・配給)33%、映画興行14%、映像事業(制作・版権)26%。最も利益率の高い映画営業には、映画の製作・配給だけでなく、ビデオ・テレビ番組・コマーシャルフィルム等映像の制作・販売が含まれている。収益源の多様化が好調な業績につながっているといえるだろう。

<映画主要3社の業績推移>

松竹

松竹

東宝

東宝

東映

東映

注:18/2期または18/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン証券 - 企業分析ナビ

4. 映画・アニメ関連銘柄

コード 銘柄名 市場 概要 終値
(4/11)
注文画面
3791 IGポート 東証JASDAQスタンダード 独立系のアニメ制作会社。海外で知名度がある。実写映画『亜人』、Netflix独占配信アニメ『B: The Beginning』を制作。版権事業では『魔法使いの嫁』『黒子のバスケ』『ハイキュー!!』の二次利用で収益分配を計上。 2,589
4816 東映アニメーション 東証JASDAQスタンダード 東映の子会社でアニメ業界首位。中国に『ワンピース』専用劇場を開設。国内外で『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』をなどのゲーム化権が好調。 3,150
9468 カドカワ 東証1部 大映、日本ヘラルドを買収し、映像ブランド「角川映画」を築く。出版事業が売上高の5割超。動画配信のドワンゴ社と統合したが、「ニコニコ動画」の有料会員減少が続き営業減益幅が拡大。 1,123
9601 松竹 東証1部 山田洋次作品が有名。配給作品に『HiGH & LOW THE MOVIE』など。2013年、歌舞伎座新開業。映画館「松竹マルチプレックスシアターズ」を持つ。 15,290
9602 東宝 東証1部 邦画配給、興行収入で圧倒的首位。配給作品に『メアリと魔女の花』など。傘下に洋画配給の東宝東和、映画館「TOHOシネマズ」を持つ。 3,600
9605 東映 東証1部 テレビ映画首位級。提携制作・配給作品に『仮面ライダー』『プリキュア』など。映画館「ティ・ジョイ」に出資。テレビ朝日、TBSテレビ、バンダイナムコHDが大株主。 11,420

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。2014年7月、経済アナリストとして独立。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

社会人になって最初に配属された外国証券室で、Excelプログラミングの勉強を始める。次第に社内でシステム開発やデータベース構築を担当するようになる。その後、アナリスト、エコノミストへとキャリアを変えていくが、ITスキルを活用することで業務を効率化し、分析のための時間を生み出すことで仕事のスピードとクオリティを高めている。また、社内でワークショップを開催し、相手のつまずきやすい点を把握。わかりやすい教え方に好評を得ている。

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