業界図鑑 ~業界・セクターごとのトレンドを掴む~

2018年01月31日
岡三オンライン証券株式会社

【業界図鑑】倉庫・運輸関連業界 ~ 施設の高機能化とグローバル化に活路を見い出す

12月期の決算発表が前半のピークを迎えている。増収減益の発表が予想される業界の一つに、倉庫・運輸関連業がある。貨物の取扱量を追わず、差別化による単価向上に取り組む企業が増えてきた。また政府が注力している「働き方改革」の会議では、自動車運送事業が建設業とともに議論の対象とされている。したがって、各社のトラックドライバーの人件費は増加傾向にある。このような傾向は、縮小均衡ではなくビジネスの適正化によるものであるため、決算内容が市場で好感される可能性は高いのではないだろうか?

1. 国内需要は頭打ち状態

国際貨物輸送量はリーマンショック前の水準に回復し、今後も増加が見込まれるが、国内貨物輸送量は減少傾向にある。年間国内貨物輸送量は、1997年の65億トンから2015年には47億トンに低下。主に機械、石油、木材などが低下している。一方、EC(電子商取引)市場は、2007年の5.3兆円から2015年には13.8兆円に成長し、それに伴って宅配便の取扱件数は増加し続けている。

倉庫業においては、この5年間の入庫量、出庫量、保管残高をみると、ほぼ横ばい状態である。最近の傾向として、保管型だけでなく、集配送や流通加工も含めた物流施設の多機能化と大型化が進んでいる。

2017年10月の営業普通倉庫の実績(主要21社)

出所:国土交通省の資料より作成

2. ドライバー不足問題

物流業界の最大の問題は、人材確保である。国全体では2050年に総人口の約40%が65歳以上になり、生産年齢人口は2010年比約3,000万人減となる見通しである。

2015年の労働力平均年齢は、全産業が42.3歳なのに対し、大型トラックドライバーは47.3歳と平均以上のペースで高齢化が進んでいる。若手に敬遠される理由として、労働環境が考えられる。年間所得額は、全産業平均と比較して、大型トラックドライバーで約1割低く、中小型トラックドライバーで約2割低い。また年間労働時間は、全産業平均と比較して、大型、中小型ドライバーとも約2割長い。

政府は2017年にトラックの荷待ち時間の記録を義務化するなどして、労働時間の削減を促している。しかし、全産業的に荷物の到着時間指定の細分化ニーズが高まっており、ドライバーの負担削減は容易ではない。

3. 物流事業の高付加価値化が課題

大手倉庫業者は、倉庫保管、港湾、陸海空輸送などの物流事業と、不動産賃貸業をビジネスの柱としている。物流事業の利益率は総じて低く、4%あれば良い方である。賃貸型物流施設へのニーズの高まりもあるが、利益率が高い不動産賃貸業に依存しており、営業利益の約半分を占めている状態である。

経営計画を見ると、グローバル化総合物流への構造改革だけでなく、取扱品目の選択と集中により収益性改善を目指していることが分かる。具体的には、医薬品、ヘルスケア、電子部品を扱い、施設を専門化して差別化を図っている。物流型J-REITの台頭もあり、今後も競争は続くことが見込まれる。しかし、不動産収入が安定している間は、改革への切迫感に欠ける可能性もある。

<倉庫大手3社の業績推移>

三菱倉庫

三菱倉庫

三井倉庫HD

三井倉庫HD

住友倉庫 

住友倉庫 

注:18/3期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン証券 - 企業分析ナビ

4. 倉庫・運輸関連銘柄

コード 銘柄名 市場 概要 終値
(1/31)
注文画面
9301 三菱倉庫 東証1部 倉庫最大手。国内外一体のロジスティクス拡大に注力。直近(2018/03期第2四半期、以下同様)の売上高内訳は、物流事業(倉庫、港湾・陸上運送等含む)が83%(営業利益率4.7%)、不動産事業17%(同29.7%)。 2,852
9302 三井倉庫ホールディングス 東証1部 倉庫大手。グローバル化に向け構造改革を実施し、不動産事業依存からの脱却を目指す。ヘルスケア物流に注力。売上高内訳は、物流事業が96%(営業利益率2.6%)、不動産事業4%(同55.2%)。 368
9303 住友倉庫 東証1部 倉庫大手。国際輸送が好調。2018年はタイ、シンガポールの倉庫を増設予定。売上高内訳は、物流事業が94%(営業利益率6.1%)、不動産事業6%(同48.6%)。 811
9304 澁澤倉庫 東証1部 倉庫準大手。陸上運送が物流事業の半分以上を占める。日用品・飲料を主とした消費財が中心。ドンキホーテHDが大株主。売上高内訳は、物流事業が91%(営業利益率4.6%)、不動産事業9%(同49.3%)。 2,010
9310 日本トランスシティ 東証1部 倉庫第4位。中部地区最大。倉庫が物流事業の4割を占める。売上高内訳は、物流事業が99%、その他事業1%。全体の営業利益率は2.1%。 475

著者プロフィール

増井 麻里子(ますい まりこ)氏

証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。2014年7月、経済アナリストとして独立。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。

社会人になって最初に配属された外国証券室で、Excelプログラミングの勉強を始める。次第に社内でシステム開発やデータベース構築を担当するようになる。その後、アナリスト、エコノミストへとキャリアを変えていくが、ITスキルを活用することで業務を効率化し、分析のための時間を生み出すことで仕事のスピードとクオリティを高めている。また、社内でワークショップを開催し、相手のつまずきやすい点を把握。わかりやすい教え方に好評を得ている。

注意事項

  • 本投資情報は、情報の提供のみを目的としており、取引の勧誘を目的としたものではありません。
  • 本投資情報の公開および各コンテンツの更新については、都合により予告なく休止、変更、削除する場合があります。
  • 本投資情報の掲載情報の正確性・妥当性等について、岡三オンライン証券およびその情報の提供者が一切保証するものではありません。ご投資の最終決定は、お客さまご自身の知識、経験、投資目的、資産状況等に適う範囲で、ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本投資情報によって生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負いかねます。
  • 本投資情報は、いかなる目的であれ当社の許可なく転用・販売することを禁じます。

岡三オンライン証券の口座をお持ちでないお客さま

当社ではじめて取引されるお客さまへ

岡三オンライン証券の口座をお持ちのお客さま

パスワードをお忘れの場合

お電話でのお問い合わせ

0120-503-239(携帯からは03-5646-7532)

【受付時間】月~金 8:00から17:00 ※年末年始および祝日を除く

ページトップへ