脱「不動産悲観」、出遅れREITに改めて期待−債券がインカムを失い、REITは新たなインカム商品に【高田レポート】

10/05(火)10:55

岡三グローバル・リサーチ・センター理事長
エグゼクティブエコノミスト 高田 創

株式は急伸したが、REITは出遅れ

 

先月のTODAY(2021/9/7)では、LED戦略のフロンティアとして、「D」多様化の次元の一例としてREITを挙げた。それから1ヵ月、下期を迎え改めてREITに注目したい。

 

9月以降、同じ「D」の次元でも、株式市場は岸田新首相への政策期待も含め1割近い上昇を遂げた(下図参照)。一方、東証REIT指数はコロナショック前の水準をようやく回復したものの、株式市場と比べると出遅れが目立つ。それだけに、「今後改めてJ-REITへの見直しが生じてもおかしくない」というのが本論での問題意識である。LED戦略「D」の次元のフロンティアとして、REITはもう一段、市場参加者に投資対象として認識されるべきと考えている。

 

東証REIT指数とTOPIXの推移

 

 

REITの分配金利回りに注目、これだけの水準が残るのはREITだけ

 

日本では残存期間9年までの金利が水没し、金融機関を中心に運用難が強まる環境下において、新たなインカム商品が必要となっている。以下の図表はJ-REITの分配金利回り推移であるが、長期金利(10年国債利回り)と比較して大幅に高い水準にある。ここで、

 

J-REIT分配金利回り− 10年国債利回り= スプレッド

 

とすると、スプレッドは3%を超えた水準にある。金利水没の状況下、LED戦略のなかでのインカム上の優位性がREITに向けられるのは自然なことでもある。

 

以上のスプレッドは、以下の図表に示されるように2007年頃のミニバブル期よりも高く、今回の支えはマイナス金利も含めた超低金利にある。これまで兎角、REITも含めた不動産市場が活況になった時の評価は「行き過ぎ」、「バブル」とされることも多かったが、ミニバブル期に比べて過熱感に乏しくバブルには程遠い状況であると考えられる。

 

J-REITの分配金利回りと10年国債利回りの比較

 

 

株式利回りと比較したREITの優位性

 

以下の図表にあるように、J-REITの分配金利回りは東証1部株式配当利回りと比較して高い水準にある。さらに、最近の株価の上昇により両利回りの差が拡大していることからも、一層、REITへの関心が高まりやすい。2021年度になって金融機関を中心に運用難が一段と強まるなか、最後のフロンティアがREITとなりやすい。

 

J-REITの分配金利回りと東証1部株式配当利回りの比較

 

 

「債券=インカム」が成り立たず、REITに期待

 

従来、投資を行うにあたって「債券=インカム」、「株式=キャピタル」という考え方が常識であった。しかし、今日、マイナス金利政策で金利がなくなり、債券がインカムを喪失してしまい、代替的インカム商品への需要が生じている。そこで、REITの評価がより強まっている。

 

REITも含めた不動産価格上昇に対し、依然バブルとの見方が根強いが、先に示したスプレッドの観点からみれば過熱感は限定的であり、バブルとは言いにくい。コロナショックにおいても不動産価格が下がらなかった(逆に上昇した)のは、今日、金利がなくなった世界において必然的であるともいえる。さらに、海外と比較した日本の不動産市場の割安さは一定の評価を得ているとみられ、海外投資家のJ-REITへの資金流入は今後も続く可能性がある。

 

REITの分野ごとの乖離、不動産への根強い悲観論

 

新型コロナが「コロナ7業種」を中心に深刻な影響を及ぼすなか、J-REITでも分野別の二極化が進んでいる。コロナショックに伴う価値観や生活・行動様式の変容から、不動産市場全体への悲観論は根強く存在する。以下の図表において、ホテルはコロナショック前の水準を取り戻していない。また、テレワーク・郊外への移住等の傾向も生じたなか、J-REIT全体の中核を占めるオフィスも危機前の水準には戻り切っていない。不動産への悲観的な見方は特にオフィス需要への不安に向けられやすく、J-REITに占めるオフィスの割合の高さから、J-REIT全体への不安意識が生じた面もある。

 

ただし、テレワークの浸透でオフィスの需要は低下しても、同時に住宅需要の上昇圧力につながる可能性があるため、不動産全体の需要にとっては中立であるとも考えられる。

 

用途別REIT指数の推移

 

 

オフィス市場の悲観論を再検討

 

以下の図表は、1週間当たりの出勤回数の推移を示す。図表ではテレワーク後退の兆しも見られ、オフィス回帰の動きが生じている。また、コロナショックに対応して「密」を避ける動きが強まることで、一人当たりのオフィススペースを拡大する動きも生じやすい。

 

コロナ危機で直接的影響を受ける企業を除けば、企業業績は改善しており、資産価格の上昇のなかで企業に賃料を支払う余裕が生じている。それだけに、単純にオフィス需要が減少するという悲観論は必ずしも成立しないだろう。こうしたオフィス回帰の動きは米国でも生じており、コロナ下のニューノーマルとしてテレワークとオフィス業務が両立することで、一定のオフィス需要が続くことを示すものである。

 

1週間当たりの出勤回数の推移

 

 

東京のオフィス供給も減少に

 

以下の図表は、東京23区における大規模オフィスビル供給動向を示している。2020年の大量供給のあと、2021年、2022年のオフィスビルの供給は大幅な減少が予想されている。その後は供給が増加する予想となっているものの、過去30年平均と比較して供給ペースは鈍化するとみられ、需給面の不安も少ない。コロナ7業種による不動産処分に加え、鉄道系企業等からの不動産売却事例もあったことで、殊更に不動産市場の悲観を生じさせた面もあったのではないかと推測される。

 

東京23区における大規模オフィスビル供給動向

 

 

深刻な運用難のなか、J-REIT投資のインカムニーズを再認識

 

金利水没のマイナス金利環境が続き、2021年度以降も運用難の状況は強まっている。なかでも、地域金融機関を中心に預貸ギャップ拡大が続くだけに、REITの安定的な利回りは重要な運用対象になっている。そのため、金利水没により債券がインカムを失うなか、代替的インカム商品を求める潮流が続き、REITに対する評価がより高まると考えられる。

 

コロナ危機後のテレワーク等の進展でオフィスを中心に不動産に対する悲観は根強いが、先週のTODAY(2021/9/28)「コロナニューノーマル7業種」で示したように、コロナショックのなかでも不動産業は業績改善が期待できる業種の一つでもある。コロナ後のニューノーマルとして新たな不動産活用の時代に向かっているなか、不動産に対する悲観を脱し、改めてREITに注目する余地があると考えている。

 

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(2021年8月30日改定)

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