2021 年「とんでも予想」【高田レポート】

12/01(火)09:50

岡三グローバル・リサーチ・センター理事長
エグゼクティブエコノミスト 高田 創

2021年も想定外への備えの年

例年、想定外のことはつきものだが、2020年は年初から想定外ばかりだった。新型コロナウイルスの拡大だけでなく、年初から多くの想定外に見舞われた。2021年もメインシナリオ以上に、サブシナリオ(プランB)、多様なリスクシナリオに思いを巡らすことが重要だ。今や、何事も想定外として片付けることができない世の中になっている。
以下が2021年のとんでも予想である。とんでも予想は、その実現性は高くないものの、実際に発生した場合には、その影響も大きく注目すべきものを指す。実際のビジネスや投資活動を行う上ではとかく、メインシナリオに拘ってしまい、特に不都合な事象が生じることを想定することをタブー視しがちだ。しかし、実際には常に自由な発想が必要であり、敢えてメインシナリオではなく、一見、奇想天外・不都合とも見えるシナリオに思いを巡らす柔軟さも重要だ。

確証バイアス

行動経済学で「確証バイアス」(confirmation bias)という概念がある。これは、人間が無意識に肯定的な都合のいい情報ばかりを集めてしまい、否定的な情報を集めようとしない心理を有することを指す。人々はとかく自らの固定観念を強めがちだ。そうしたなかでの対処法は、自ら「確証バイアス」があることを意識したうえで、あえて意識的に自分に都合が悪いシナリオも探して対応することにある。そこにリスクシナリオを考えることの意義もある。

リスクの「動物園」、ブラックスワン、ブラックエレファント、グレイリノ、グリーンスワン

一般的にビジネスにおけるリスク管理の世界では、想定外のことを「テール・リスク」として議論する。ここで、テール・リスクとは想定もしていないことが起きるリスクであり、標準的な確率分布のなかで「裾野」・「尻尾(テール)」で生じる確率の低いイベントのことを指す。確率的には非常に低いイベントながらも、実際に生じると影響が大きい事柄として「ブラックスワン」(Black Swan)として議論されることも多い。
一方、「ブラックエレファント」(Black Elephant)とは、皆が長い間認識していながら、見てみぬふりをしていた事柄がある日突然、大きな問題に発展することを指す。
同様に「グレイリノ」(Gray Rhino、灰色のサイ)は、マーケットに高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず、軽視されがちなことである。サイは通常、体が大きくても反応が鈍く、普段はおとなしいものの、一旦暴走しはじめると誰も手がつけられなくなるということだ。格差拡大、少子高齢化、バブル等、ゴルディロックスのなかで危険の予兆を目にしながらも注意が払われなくなることにも留意が必要だ。
「グリーンスワン」(Green Swan)とは、気候変動が引き金になる新たなグローバル金融危機のリスクで、気候変動リスク版のブラックスワンである。2020年1月にBISとフランス中銀の共同作業でまとめられた論文に登場したもの。将来、気候変動をきっかけにシステミックな金融危機が発生し、中央銀行や金融当局も打つ手がなくなることを指している。
以上のリスクの動物園巡りが2021年にも必要だ。本日の「とんでも予想」はその動物園巡りの一つの例ともいえる。

100年に一度が毎年起きる時代

「100年に一度」とされるような出来事が頻発し、今年はコロナで誰もがそれを実感した。世界中で起きる地政学的なこと、金融市場で生じること、内外の気候変動など事例は事欠かない。従来、想定外とは、全くシナリオにないこと、殆ど考える必要もないようなもの、杞憂と言ってもいいような扱いだった。従来、気候変動については、「お天道様の下で起きることはどうしようもない」として片づけられたが、いまや、自然災害が生じても想定外で済ませられない。
様々な事象を想定外として扱うことができない状況に我々は対峙しているなか、リスクシナリオの日常化が今日の特徴であり、従来の固定観念を取り払い様々なことに思いを巡らすことがシナリオ作りの重要な点だ。今日、敢えて固定観念を払拭すべく「真剣に遊ぶ」ことが必要な時代だ。

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(2019年10月改定)

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