コロナ危機下のバランスシート問題研究会提言- 事業構造改革の加速による成長実現戦略

09/17(木)13:30

岡三グローバル・リサーチ・センター理事長
エグゼクティブエコノミスト 高田 創

積極的感染防止戦略による経済社会活動の正常化を

今月9月10日に「コロナ危機下のバランスシート問題研究会提言事業構造改革の加速による成長実現戦略-」とした提言が発表され、筆者もその参加者の一人として名を連ねている。今回の参加者の多くはバブル期のバランスシート調整を様々な立場から体験した人達である。1990年代以降の「失われた10年」を身をもって体験した立場から、バランスシート問題にともなう「過剰債務の罠」に陥ったことで生じた経済低迷の長期化を再び繰り返してはいけないとの強い共通認識が今回の提言に至った背景にある。ここでのポイントは以下の通りである。

提言のポイント

1.コロナ感染症の影響長期化に伴い、売上げが激減し、コストが増大した日本企業は債務を増大させ、バランスシートのダメージが今後深刻化することは必至。

2.90年代の日本はバブル崩壊の結果、貸し込んでいた銀行は巨額の不良債権を抱え込んだ。一般企業はバランスシートの毀損状態が続き、キャッシュフローは借金の返済に充てられ、投資されない設備や人材は劣化し、日本経済は長期低迷。

3.こうした「失われた10年」の繰り返しを回避し、リーマン・ショック後の問題先送りを断ち切るため、コロナ危機によって生じた過剰債務を早く解消し、毀損したバランスシート問題を速やかに解決することが必要。

4.バランスシート問題は資本注入だけでは解決しない。キャッシュフローを増大させる事業構造改革と債務調整を一体として推進する必要。

5.低い生産性を抱えるなどコロナ危機前から事業構造改革が長年必要であったところ、コロナ感染拡大の結果、ビジネスのあり方も大きく変容。事業構造改革の必要性が一層高まり。プレーヤーが多すぎる産業は産業構造改革も必要。

6.改革を先送りせず、無利子無担保融資制度の期限利払い・元本返済実質猶予期間である3年間の間に必要な事業構造改革等を遂行すべき。

7.コロナ感染拡大の直撃を受けているのは地域の多数の中小・小規模企業。資金繰り支援で時間稼ぎができても、その多くは過剰債務を抱え込んだ状態となる可能性。

8.多数の中小・小規模企業は事業再生が必要であり、そのためには債務調整メカニズム強化が必要。

9.再生がどうしても困難な場合には、無理な支援で債務を増やしてかえって問題を悪化させるよりも、早期再出発が現実的な最善策である場合も。

10.このため、①早期相談制度を強化、②金融機関・信用保証協会に対して個人補償債務免除への積極的対応を求める、③これに伴う信用保証協会等の損失に対して財政的に支援、④再挑戦支援や職業教育訓練強化などを進めるべき。

11.金融機関が中小・小規模企業の事業再生対応を先延ばしせず、早期再生・再出発を完遂できるよう、監督・検査を通じて積極的支援を促して行くべき。その際、予防的資本注入の仕組みも活用して行くべき。再生・再出発支援の実績の定期的な公表を通じて積極的な取り組みを促して行くことも検討すべき。

バブル崩壊時とコロナ危機の違いは

今回、コロナ危機でのバランスシート調整プロセスも先のバブル崩壊後と共通する。どちらも過剰債務を抱えた結果、企業は新規投資が行えず、事業が劣化し、長期的な経済低迷の罠に陥るリスクを持つ。バブル崩壊後の日本の「失われた10年」はその典型である。ただし、その違いは、今回はバランスシートの右側、資本の毀損が起点である。すなわち、企業が売上げ減少等に伴う損失から資本を失うことが今回の出発点となる。同時に、資産価格が下落して、バランスシートの左の資産価値減少も二次的に生じうる。その程度は現段階ではバブル崩壊時と比べ限定的だ。バブル崩壊では不動産を中心とした資産デフレの影響が建設・不動産・ノンバンクを通じて大手金融機関の問題となった。一方、コロナショックでは経済活動の停止に伴う、飲食・小売・宿泊を中心とした中小企業の問題が地域金融機関に波及する連鎖が生じやすい。バブル崩壊はマクロ経済の転換に伴う大企業を中心としたものだったが、今回は中小企業中心の新たな形態として認識する必要がある。

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