金利水没でも まだ市場機能・生体反応が残るのはどこだ【高田レポート】

09/10(木)09:30

岡三グローバル・リサーチ・センター理事長
エグゼクティブエコノミスト 高田 創

金利水没の状況でも市場機能・生体反応はどこに残るのか

当TODAYではこれまで、金融市場のマイナス金利も含め「金利水没」とされる人類史上初の事態が生じていると議論してきた。本日は、こうした異例な金融市場において、どこに市場機能が残るのかを議論したい。資産運用においてアクティブ運用での超過リターンであるα(アルファ)を獲得するには市場機能が残ったところで考えるしかない。

LED戦略の向かう先は金利水没でも市場機能が残る場所

以下の図表はこれまでも紹介してきた金利の水没マップである。金利が水没すると基本的に市場機能が働きにくくなると考えられる。従って、金利水没を前提にした運用では、従来からストーリーラインとしてきたLED戦略が中心になる。

金利水没から逃れるLED戦略に

筆者が示してきたLED戦略で、国内債券に依存する場合は、 「L」(Long)、長期の次元で超長期分野の関与が必要になり、世界的に超長期分野への活用が拡大されていく。次に「E」(External)、海外のフロンティア拡大が重要になる。また、「D」(Diversified)、多様化でキャッシュフローの源泉に向かう必要が生じてくる。金利がマイナスでもクレジットスプレッドは残存することで、クレジット投資へのニーズが生じやすい。また、配当・賃料はマイナスにならないなか、新たな「主食(おコメ)」として株式・不動産へ資金の流れが生じた。

「L」の次元、超長期分野がフロンティア

筆者は長年、債券アナリスト業務に従事してきたが、そのなかで常に、投資家にとって債券投資は投資の中心、「主食」であり、いつも食べる「おコメ」のようなものと説明してきた。特に、預金に資金調達を依存している預金金融機関にとって期間リスクをテイクして収益を確保すべく債券に投資することは重要な金融機能の発揮と考えてきた。
ただし、ここで「おコメ」の味は長短金利差にあり、短期で調達した資金を期間のリスクをとることによる収益が長短金利差として得られてきた。また、期間の経過に沿ってロールダウンによる収益も獲得可能であった。ここでロールダウンとは時間の経過とともに利回り水準がイールドカーブの傾斜を転がるように低下して債券価格が上昇することを指すもので、ロールダウンによって期待される効果をロールダウン効果という。
その結果、従来の債券のメリットが活用できるのは、水没マップ上、水面にでた10年以上となる。すなわち、10年までが水没下環境では20年などの超長期分野への投資が重要になる。水没環境下では超長期分野をいかにポートフォリオに加えるかも重要な論点になる。超長期分野は、超長期先物市場が事実上機能しないなか、そのヘッジツールに欠ける面があるものの、リスク量を管理しつつも超長期分野の取り込みは重要だ。また、そうしたニーズを背景に、今後、超長期国債や社債市場の拡大も期待される。

海外分野へのフロンティア

次は「E」(External)海外の次元である。どの国がまだ水没を免れているかを確認したうえで、今後、世界の投資家、「運用難民」が残ったフロンティアを探すことが必要になる。以下の図表は、利回りがプラスの債券残高を国別に示したものだ。コロナショック以降、金利が低下したとはいえ、圧倒的な残高が米国に残ることになる。

米国が1/3以上、米中で半分以上

以下の図表は先の図表の数値をもとに利回りがプラスの債券の国別構成比を示したものだ。米国が1/3を超え、中国と合わせて半分を超える。次いで、日本、英国、カナダ、インド等が続くことになる。今後は中国の債券もフロンティアとして検討対象になるだろう。

「D」多様性を考えればエクイティや実業に

コロナショックでリスクを意識しつつも、LED戦略に戻るバイアスが根強く存在するのはなぜだろか。その理由は、リスクフリー商品の存在が、マイナス金利で失われた面も大きいと考えられる。その結果、従来から運用上の常識であった「債券=リスクフリー」の前提が変わる可能性がある。そのなかでは、新たなリスクフリー商品を探すことが重要になる。伝統的な債券を中心としたインカム商品ではクレジット商品、なかでもインフラを中心とした安定的な利払いが重視されやすい。また、安定配当の株式、安定賃料の不動産も新たなインカム商品の位置づけとなる。ただし「修正LED戦略」においては、コロナショック以降、一層、インカムに対する選別が強化される。株式市場では比較的高配当で安定したものに向かいやすい。不動産市場でもコロナショック以降、一時的にREIT市場は大きな下落圧力を受けた。ただし、その後のREIT市場では賃料の安定が見込まれるインフラや物流に目が向きやすい。以上、金利水没でデット市場が機能不全に陥りやすいなか、エクイティ分野やキャッシュフローの源泉がある実業分野に市場機能を求めていくことになりやすい。

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