コロナショック、今後に向けたリスク要因はなにか -資産デフレとグローバルリスクへの波及を防げるか【高田レポート】

09/08(火)09:00

岡三グローバル・リサーチ・センター理事長
エグゼクティブエコノミスト 高田 創

影響は「コロナ7業種」に止まったが、想定しうる4段階リスク

次ページの図表2は企業のバランスシートの概念図である。当TODAYでは、コロナショックの特徴は、中小零細の「コロナ7業種」を中心とした資本の毀損が起点であるとしてきた。すなわち、中小零細企業を中心に売上げ減少等に伴う損失からバランスシートの右側、資本が毀損することによる倒産や廃業も含めた問題にあるとし、比較的中小零細企業に限定しているとの評価も行ってきた。一方、「コロナ7業種」に限らず、大企業も含めた広がりにまで派生するリスクとして、以前の当TODAY(6/2)では以下の4つを指摘した。
第1段階が、先行き期待低下から株式・不動産を中心に資産価格が下落、バランスシートの左の資産デフレ不安である。
第2段階は、世界的な需要の減少によってグローバルな大企業に波及する不安だ。そのリスクは第1段階のリスク要因である資産デフレによる減損リスクによっても加速される。
なかでもM&Aを中心としたのれんの償却が広がるリスクも存在する。
第3段階は、中小企業の倒産不安に加えて、以上の第1段階の資産デフレ、第2段階の大企業の不安も加わって、金融システム問題につながる可能性がある。グローバル企業に不安が拡大すれば、大手銀行の負担が拡大するリスクも生じうる。
第4段階は、以上の不安から中小企業を中心とした倒産リスクが雇用問題につながり社会不安が幅広く生じる点にある。
以上から、今回のコロナショックは、「コロナ7業種」に限定した問題の広がりをいかに遮断するかが重要な課題とした。それから、3ヵ月が経過し、その後の評価が本論の目的だ。現段階では、「コロナ7業種」からの遮断ができていることが景況感の悪化を防いでいる。特に、資産価格下落を食い止めた点が大きく、大手企業への業績面での波及を防いでいる。ただし、その反面、資産価格堅調のもと、格差拡大の潜在的問題を抱えるだけに留意も必要であろう。

「コロナ7業種」からの波及が限られる状況

今回のコロナショックは中小零細企業を中心とした「コロナ7業種」を起点として、その波及をいかに遮断するかが重要になる。なかでも資産デフレとしてバブル崩壊の再来になることを極力回避することが重要だ。約10年前のリーマンショックでは金融の制約から大手グローバル企業への甚大な影響が生じていた。リーマンショックの時には市場性ファイナンスに依存したファンドの資金繰りが顕現化しただけに、今回も日本のみならずグローバルな視野でファンドを中心としたシャドーバンクの資金繰りには十分な配慮が必要になる。今回のコロナショックを受けた現時点ではそうした影響は限定されていると見られる。
日本のバブル崩壊、リーマンショックでは金融の制約から資産価格が大幅に下落したことがグローバル企業に大きな影響を与えた。今回は、2020年3月以降、世界的規模での財政・金融政策が資産市場を下支えし、その後の大手企業を中心とした回復の大きな要因になったと考えられる。当時の主要金融当局はシャドーバンクを対象に対策を行っていたと考えられる。

3月・4月の世界的金融財政政策が波及を防いだ

仮に、今年3月にかけて米国を先頭に行われた大規模な金融財政政策のサポートがなかった場合、資産価格の下落が続き、今日の状況とは大きく様相が異なった可能性もある。それは、世界に金融面から波及したリーマンショックシナリオであり、資金繰りの観点からグローバルな大企業にも波及が生じ、その結果、金融システム問題が拡大した可能性もある。すなわち、金融の制約で大規模な資産価格の下落と大企業への波及、さらには、金融システムの不安へのネガティブ・フィードバックが生じたことになる。“Dash for cash”とされて国債のような安全資産とされるものまでも売却が進む混乱で金融システムの毀損も懸念される状況に陥っていたかもしれない。以上のリスクを春先の各国の早期な政策対応で回避した点が大きかった。
今後も、以上のリスクの連鎖を回避するには、引き続き、資産価値の維持を中心に世界的な金融財政政策の協調も必要になる。今後の状況も以上の波及経路を念頭に置きながらリスク管理を行う必要があるだろう。

依然残る構造問題

日本の過去半年を振り返れば、資産デフレを回避したことに加え、震源地である「コロナ7業種」についても、緊急融資、雇用調整給付金等の対応で倒産リスクを極力回避させた点が大きな安心感になっている。ただし、問題は以上の緊急融資による延命措置の持続性にあり、「コロナ7業種」について、その後、時間の経過とともに廃業や淘汰が生じる可能性がある。同時に、「コロナ7業種」について潜在的に存在する非効率性をそのまま維持させることへの是非もある。従って、今後、新たな産業構造へと誘導していく対応も本来は必要だろう。

出口が困難ななか、格差拡大に

これまで、「コロナ7業種」からの問題の拡大を遮断できてきたのは政策サポートも含め資産価格を維持してきた面が大きかった。同時に、今後もコロナ感染症の二次リスクも存在するなかでの不安を抑制するためには、金融面を中心としたサポートの継続が必要になる。コロナショックの不安が長期戦となるなか、金融緩和を中心にした出口を描くことができず、緩和期待が長期化することへの安心感、ユーフォリアが資産市場の金融不均衡を拡大させる面が世界規模で生じやすくなる。以上の、資産価格の優しい政策対応はコロナショックの波及を遮断する点では妥当であるが、その結果生じうる格差拡大や、社会的不安定さをもたらす要因となることに留意が必要だ。

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