【業界図鑑】ゴム製品業界 ~ 天然ゴムへの需要が価格を下支え
04/03(水)15:21
WTI原油先物価格が62ドル台まで上昇している。原油といえば燃料が連想されやすいが、合成ゴムも原油、ナフサからできており、価格が原油と連動しやすい。原油価格が上がれば、その競合である天然ゴムに割安感が出てくるが、需要が高まり結果的には価格が上昇する。今回は天然ゴムを中心に、ゴム製品セクターの動向を見てみたい。
1. ゴムの種類
国際ゴム研究会 (IRSG) によれば、2017年の生産量は、天然ゴム (Natural rubber) が1,355万トン、合成ゴム (Synthetic rubber) が1,510万トンだった。前年からの伸び率は、それぞれ7.5%、1.5%だった。全体の割合として、天然ゴムの比率が上昇傾向にあり、現在では47%に達している。
ゴム用途の4分の3はタイヤである。天然ゴムは樹液でできた特殊な高分子化合物であり、合成ゴムよりも接着性及び破壊強度に優れ、内部発熱しにくいことから品質的に優位とされる。一般的な乗用車用タイヤでは、合成ゴムの割合が約70%と高いが、トラック用では天然ゴムの割合が高い。農機や鉱山機械用にもブレンドが用いられる。航空機用では100%天然ゴムを用いることもある。
天然ゴムの一次加工品は、3種類に大別される。「濃縮ラテックス (Condensed latex)」 は、天然ゴムを60%程度に濃縮したものである。「RSS (Ribbed smoked sheet; 燻煙シートゴム)」は、ギ酸で凝固させたゴムをシート状にし燻煙室で加工して作られる。そして「TSR (Technically specified rubber; 技術的格付ゴム)」は、ギ酸で凝固させたゴムを粉砕しながら水洗いし、熱風乾燥させてブロック状にしたものだ。国際的には品質によってさらに区分されている。一般的に、RSSの方がTSRより価格が10%程度高い。
<TOSCOM天然ゴム先物価格 (RSS3) の推移 (2014/5末~2019/4/1、月足)>
注:価格単位は円(1Kg当たり)。
出所:東京商品取引所
2. 天然ゴムの主な生産国
2017年の合成ゴムの生産量ランキングは、1位がタイ、2位がインドネシア、3位がベトナム、4位中国、5位がマレーシア。上位5ヵ国で8割強を占めている。7位のコートジボワールと10位のカンボジアは、前年比+30~40%と急成長している。
インドネシアでは、生産においてTSRが大半を占める。RSSの生産比率が高いのはインドとスリランカだが、日本はタイからの輸入を増やしている。
日本メーカーは、天然ゴムを100%輸入しており、品種別でみると、TSR7割、RSS2割、その他1割 (液体のラテックス等) 、国別ではインドネシア6割、タイ3割となっている。
3. 東南アジア輸出規制と大型車需要が価格を支える
世界の景気後退懸念から、天然ゴム価格は低迷している。4月からタイ、インドネシア、マレーシアによる輸出規制が開始される予定だったが、政局混迷でタイの参加が遅れているため、需給逼迫には至っていない。タイヤメーカーは原料安の恩恵を受けているが、天然ゴム価格は底打ちしたとみられ、今後は原油価格に連動して上昇する可能性が高い。2017年のように価格転嫁できるかが問題となる。
需要面では、米国や中国で自動車販売台数に陰りがでているものの、SUVやピックアップトラックなど、タイヤに天然ゴムを使用する大型車は売れている。ゴム製品メーカーは、農機や鉱山機械といった非自動車分野にも注力しており、今後天然ゴム価格が底割れする可能性は低いのではないだろうか。
<ゴム製品メーカー3社の業績推移>
注:19/12期以降はコンセンサス
出所:岡三オンライン証券-企業分析ナビ
4. ゴム製品関連銘柄
著者プロフィール
増井 麻里子(ますい まりこ)氏
株式会社Good Team 代表取締役社長
証券会社、ヘッジファンドを経て、米系格付会社・ムーディーズでは多業界に亘る大手事業会社の信用力分析、政府系金融・国際協力銀行(JBIC)では国際経済の調査を担当。
経済アナリストとして独立し、主に投資家向けのアドバイザリー業務を実施。
2017年6月、株式会社Good Teamの代表取締役社長に就任。
主な執筆・出演に週刊エコノミスト、国際金融、時事速報、Bloombergセミナー、日経CNBCなどがある。
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